給付金ベーシックインカムBIは、ナゼこの世の地獄なのか?

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給付金ベーシックインカムは、財政政策の大麻である

 仮にですが、抗癌剤や風邪薬と同じく、同じクスリなのだから、大麻を合法化しろ!と語る人がいたら皆さんどう思うでしょうか?私は、同じ財政政策でも、減税や政府支出の拡大と、給付金やベーシックインカム(BI)は、全く違うと考えています。例えば、末期癌患者にモルヒネを投与するのは全く問題ないのと同じく、貧困者が生き続けるための生活保護には反対しませんが、全ての国民に理由も無くカネをばら撒けという給付金(ベーシックインカム)には大麻解禁と同じく断固反対です。正に財政政策の大麻解禁論とも言える給付金が、いかに間違っているか本稿で論考します。

架空国家『給付金天国』を建国しBIを論考する

 ベーシックインカムが与える経済効果について確認するには、ひとつの架空国家を想定して論考するのが分かりやすいでしょう。そこで南極大陸に、日本と同じ人口のアフリカからの黒人難民1億2500万人が移住する「給付金天国」という架空国家を新たに建国したと想定し、シミュレーションします。

 この国には、政府と中央銀行があり、独自通貨を発行し、全ての国民が口座を持つ民間銀行(ネットバンク)があり、全ての国民がスマフォで決済可能な環境とします。因みに独自通貨の単位は、日本と同じ円とし、通貨価値は、100円=1$と想定します。

 また、この新国家は国民が生活可能な、最低限のインフラや住宅は、世界各国の援助で整っており、また電力、上下水道、ゴミ焼却施設などは、原発を使って供給されるという設定なので、国民は数年間、南極の極寒の環境でも生き永らえるとします。

給付金天国で、月7万円のベーシックインカムを提供したら?

 極寒の南極大陸に建国された「給付金天国」では、その名の通りベーシックインカムが全国民に月7万円払われます。政府は中央銀行に無利子無期限の国債を発行し、中央銀行の直接引受で、政府の準備口座に通貨が発行されます。その通貨は、政府から民間銀行の口座に振り替えされ、全ての国民の民間銀行口座に振り込みされるのです。

 日本と同じ人口の1億2500万人に月7万円の給付金が支払われると、月8兆7千500億円の財政出動となり、年間では、105兆円もの財政出動となります。因みに他の税制や社会保障は全て日本と同じとします。

給付金天国では、1年後に全ての国民が餓死するだろう

 この給付金天国という国は、アフリカ難民1億2500万人を集めて建国した架空国家ですので、全国民が失業者の国となり、建国時のGDPはゼロ円です。そこに100兆円もの給付金をバラ撒いたら、さも国民は安堵するなど思ったら大間違いで、1$=100円の通貨は瞬時に暴落して無価値になり、月7万円の給付金も価値ゼロとなり、1年後には全国民が餓死しているでしょう。

 物理的にも、不毛な南極大陸では、一粒のコメも生産できませんので、食料は全て輸入に頼ります。貿易は一方的な輸入のみで、為替レートが暴落するという訳です。通貨の価値とは、通貨そのものに有るのでは無く、国民の労働、その国の物やサービスの供給能力に担保されているのですから「給付金天国」の通貨が、無価値になるのは当然でしょう。

通貨の価値とは、国民の労働である

 仮に「給付金天国」が国民に月7万円をバラ撒くのでは無く、政府が、月7万円で全国民を雇用したら全く様相が変わります。全国民が失業者だったのが、失業者はゼロとなり、何らかの形で7万円の付加価値が創出されるのです。

 当然ながら黒人難民が建国した新国家が、当初から高付加価値の物やサービスを提供出来るとは思いませんが、額に汗して働く彼らの労働により通貨価値は担保され、全員が餓死するなどの悲劇は絶対に起きません。1$=700円くらいに為替も暴落するでしょうが、今の新興国のレベルに所得レベルが落ち着くだけです。

リフレ派はBIで、MMT(現代貨幣理論)がJGPの理由

 政府が月7万円を全国民にバラ撒く政策がベーシックインカムなら、政府が月7万円で国民を雇用し失業者をゼロにする政策が、現代貨幣理論(MMT)が唱える雇用保障制度ジョブ・ギャランティ・プログラム(JGP)に相当します。

 ベーシックインカムを唱えるリフレ派などの論者の思想的な特徴は、貨幣を商品と見ている点です。仮に7万円の給付金が、7万円の価値を持つ商品、例えば金などに裏付けされた通貨なら、価値がゼロになることは無いでしょう。中央銀行が生産する商品なのですから、ケチケチせずバラ撒けという話なのです。

 それとは対照的なのは現代貨幣理論の方で、貨幣を商品ではなく、負債と見ている点です。国民に負債をバラ撒いても意味不明で、政府が支払う通貨(=負債)に相当する労働が提供されなければ、会計上ツジツマが合わなくなってしまいます。現代貨幣理論の特徴は、決済や会計やバランスシート上で起きている事柄を、理論のベースとしているので、ベーシックインカムは奇妙な政策に見えるのです。

貨幣負債論から分かる財政破綻が起き得ない理由

 架空国家「給付金天国」で、通貨価値はゼロになると評しましたが、原因は財政赤字では無く、通貨の信認なる、ふわったした理論でもなく、実体経済の供給能力がゼロだからです。これは現実の日本社会でも同じです。国民が550兆円と言われる付加価値を供給する能力があれば、政府債務がどんなに増えようとも、通貨価値は安泰です。

 まあ、お金そのものが負債なので、政府債務とは、利息の付く通貨であり、国民から見ると国に預けた定期預金と全く同じなので、国債が増えるのを喜んでも良いくらいの話しです。

 日本政府は本来、消費税を廃止するなどして、国民から資金を取り上げるのを止め、その上で財政出動を増やして、国民の供給能力を高めて、通貨価値を保つべきなのに、実際は真逆の政策を行なっているのですから、呆れ返るばかりです。

消費税廃止への道筋としての給付金批判の重要性

 また日本政府の消費税10%増税の経済対策を見ると、給付金タイプのものばかりで、今後も、消費税増税&給付金という組み合わせで、消費税増税の無限地獄が続く危険性が高いのです。消費税の減税も行われず、政府支出も拡大されず、貧相な給付金でお茶を濁す可能性が高く、金融緩和をすれば消費税を増税しても良い、との理屈と似た現象が、給付金でも起きるでしょう。

 確かに世間には、積極財政論者は少ないのだから、消費税増税に反対したリフレ派や、それと似た思想を持つ給付金論者に目くじらを立てる必要も無い、とのご指摘も有ると思います。しかし財政破綻論者の批判は、リフレ派など、ベーシックインカムなどを掲げる滅茶苦茶な理論を掲げる論者に向けられたものばかりで、これからも給付金批判の価値は益々高まると考えています。

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旅丘

なぜBIがそんなにいけないのでしょうか。
BIに対してよくある批判は、
1勤労意欲を低下させる、2公平性を損なう、3、かえって弱者に厳しくなる、4通過の信任ガー…
くらいでしょうか?
私にはどれも的はずれに思いますが。
もちろん、別の批判も大歓迎ですが、まずは上の4つに答えます。
1.
まず、今のデフレという状況は、「供給」よりも「需要」を伸ばす必要があります。働くというのは「供給」をのばす事であり、逆に労働の価値が買い叩かれてしまいます。
デフレギャップを解消出来ないのであれば、むしろもう少し休んだ方が遥かにいいと思います。
2.
資本主義、契約社会を徹底させ過ぎるとろくな世の中にならないのでは?
3.
BIを、既存の社会保障の代わりとしてとらえれば、確かにそうかもしれません。
でも、巨額のデフレギャップを抱える日本において、BIと既存の社会保障との両立は余裕で可能です。
4.
投稿主に様にはもはや説明不要でしょう。度を越えるインフレなんて絶対に興りません(断言)

貴殿はエントリーを読んでコメントを書かれましたか?

本投稿では、1から4の批判は何も書いておりませんが?

エントリーを読み込み内容を理解した上で、ご意見頂ければ幸いです。

旅丘

追伸
記事を読む限り、BIを導入したら既存の社会保障が全てとって変わられてしまう、という感覚がみぬさ様にはあるのでしょうか?
それほど高額のBIは(少なくとも当初は)必要ありません。まずは、所得再分配、及び外国人に対する日本人の優遇措置、として考えてみてはいかがでしょうか。

「BIを導入したら既存の社会保障が全てとって代わる」など本エントリーでは一言も書かれていません。

この記事ではむしろ、「税制や社会保障は全て日本と同じ」書いておりますが?

もしや貴殿は、エントリーを、きちんと読まずにコメント書いていませんか?

エントリーを読み込み内容を理解した上で、ご意見頂ければ幸いです。

旅丘

読みましたが、やはり分かりません。

いつものブログはあんなに分かりやすく書かれているのに、BIの事となると、全く分からなくなります。
文章力の問題ではありません(私の読解力の問題?)。
財務省側の人間が書いた文章だと思って読めば「ああ、こういう下らない主張なんだな」で済むのですが、これはみぬさ様の文章とは思えません。いつもと言っていることが矛盾しているように思うのですが。
みぬさ様は、「大麻」のような美味しい話はない、落とし穴があるに決まっている、あるいはBIなんか導入したらハイパーインフレになる、とでもお考えなのでしょうか。

通りすがりの暇人

BIは好む好まざるに関わらず、議論しなければならない問題です。
今後数十年に渡り、AIによって多くの仕事が取って代わられることが、
確実視されています。その時に出る大量の失業者をどう保護して行くか。
その答えの一つとしてBIが挙がっています。
AIによって代わられる職業は単純労働ではなく、ホワイトカラー、会計士や弁護士といったものです。
勿論物書きも取って代わられるでしょう。
米国を始め、既に幾つかの国がBIの導入実験を行っています。
途中で打ち切られたりと、成果は芳しくありませんが、データは集まっているはずです。
そのデータを基に、より現実的で実現性の在るBIが検討されることでしょう。
新しい制度を検討する際、一度で上手く行く筈がありません。
何度も試行錯誤し、より現実的な形へと落とし込んで行くものです。
日本では一回も導入実験を行っていません。
であるというのに、机上の空論だけでBIを否定する。
あまりに視野が狭いのではありませんか?

 「AIで仕事が奪われる」という意見もありますが、それが正しいかどうか? は「不明」が現状ですよ。

人工知能は仕事を奪うかということについてのいろいろな人の意見をまとめてみました [ビジネスのコツ]|ビジネスのコツ アスクル みんなの仕事場
https://www.shigotoba.net/jinkouchinouwashigotowoubauka_1806_1.html

 総務省のヒアリングでも、有識者27人中16人が「新しい市場が創出され、雇用機会が生まれる」としています。

総務省|平成28年版 情報通信白書|人工知能(AI)導入で想定される雇用への影響
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h28/html/nc143330.html

 「AIが仕事を奪うのは必然。だからBI」という議論はまるで、2000年代の「グローバリズムは時代の必然。だから構造改革」と同じ構造です。
 あまり好きな論法ではないです。

通りすがりのBI賛成者

架空の国では民間市場を考慮していないという問題点があります。
「全てを輸入に頼る国家であり、外貨を獲得する必要がある」というのは共通の仮定として、地下資源など輸出できるものがあれば外資や起業家など民間部門が生産するので、国内に市場と雇用が生まれます。BIがあったとしても「外貨を獲得すべき現実」は変わらないため、生産活動が行われ国際市場との貿易を通して為替は正常に働きます。
逆に輸出できない場合は、雇用を保障したとしても貿易が行われず外貨が獲得できないため、経済破綻を免れません。

2つめの問題点は、雇用プログラムによる生産活動で付加価値を生み出せるとは限らないという点です。
通貨価値を担保するのは労働そのものではなく、その労働によって生み出された財が国際市場で価値を持つことにあります。そして労働の価値とは汗水垂らすことではなく、他者が必要とすることを行えるかどうかにあります。この意味で雇用保障を行いさえすれば通貨価値が担保されるという前提は不適切だと考えます。
また、失業者を作らないことを目的とする雇用保障とは計画経済ともいえ、市場経済より非効率て廃れたことは歴史が示す事実であり、市場経済を前提としたBIより雇用保障政策が優れているとは言えないと思います。

以上から考察すると、架空の国が失敗する原因はBIではなく輸出財を生産できないことにあり、同じ条件であれは雇用保障政策も失敗します。
逆に雇用保障で上手くいくなら、BIで生活を保障してあとは市場経済に委ねる方法の方が上手くいくとも言えるかと思います。

名無し

biのメリットって社会保障を一本化して政府の人員削減も入ってるのだけどそこを無視して考えてません?年金等も無くなるのですよ?後は生活保護者の削減?

BIには2つ基本形がありますよ~。
1)国民一律◯万円という政府支出拡大型のBI
2)社会保障一元化がたのBI

 2)は年金や健康保険、生活保護などの一元化です。これは反緊縮・積極財政派の界隈では、評判の悪いものです。
※新古典派経済学の提唱するBIです。

 社会保障の一元化、スリム化で政府の人員削減=小さな政府=新自由主義という感じになります。

 今回記事は1)のほうが主眼かと。

名無し

biに結構嫌悪抱く人は多いけど少子化高齢者社会で年金、生活保護者を国が養うとなるとどうなるのでしょうか?若い人がかなりの税金を負わされて今以上に子供を作れないって状況になりせんか?現状の年金額で貯金の無い人達が生きていくのは無理で結局生活保護になるか浮浪者になるかbiが子供にも同じ額出ると仮定したら子供を産める夫婦増えるとおもうのだけど書いてある事はわかるのだけど大麻に置き換えるからわかりづらくなってるし自分も知識無いけどbiの知識が浅いかと

 ちょっと記事を解説しますね。
 JGP(ジョブギャランティープログラム 就労保証プログラム)は、現代貨幣理論(MMT)の提案している政策です。

 現代貨幣理論(MMT)では「政府支出は、税金に制約されない(赤字国債OK)」です。ただ、インフレ制約のみが、政府支出の拡大を縛ります。

 要するに「インフレが加熱しなければOK」です。

 インフレは供給(働く)<需要(消費)の状態です。  大型の政府支出拡大をするとして、働ける人には働いて、消費もしてもらいたい=JGP。もっと消費してほしい=BIという感じでしょうか。  記事はまず現代貨幣理論(MMT)を前提としていると思われます。 ※みぬささん自身が、現代貨幣理論(MMT)について何度も論じているため  (政府支出はインフレ制約以外で、拡大は問題ないの)逆に「年金や生活保護が税金から出ている」のなら「BIやJGPも税金から出ている」になり、一緒の話になるような~。

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