インフレの種類③ ~ コストプッシュインフレ ~

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デマンドプルインフレは、需要>供給、つまり需要が供給を上回ったときに起こるインフレ(物価の上昇)ですが、需要と供給のバランスに関係なくインフレが起こることがあります。

それがコストプッシュインフレです。

原材料費や燃料費などの経費が値上がりし、モノやサービスが売れる・売れないに関係なく物価が強制的に引き上げられてしまう状況で、文字通り経費(cost)に押し上げられる(push)インフレのことです。

経費が値上がりするだけで、利益の部分は増えないため、当然企業は儲からない、つまり利益が増えません。
企業の利益が増えない、つまり労働者の賃金も増えないのに物価だけが上がってしまうコストプッシュインフレは、一般的に“悪いインフレ”と捉えられます。

日本の国土条件とコストプッシュインフレ

我が日本国は、鉄鋼や原油などの原材料や燃料の供給を、海外に頼っています。
ゆえに、これら原材料・燃料の価格変動は、海外の情勢、例えば政治状況や気候などの大きく左右されてしまいます。

例えば、1970年代、原油価格の高騰によって起こったオイルショックは、典型的なコストプッシュインフレです。
当時の日本は原油の輸入を中東に依存していました。
そこに1973年、第四次中東戦争が勃発。
これによって原油の価格が1バレル3.01ドルから5.12ドル、実に70%も引き上げられました。
その結果、日本の消費者物価指数は23%上昇。
狂乱物価と呼ばれました。
物価は過剰な上昇を示しましたが、賃金が上がるわけではありませんから消費は低迷し、1974年には経済成長率-1.2%、戦後初めてのマイナス成長を記録し、それまで続いていた高度成長期にピリオドを打ちました。

このように、コストプッシュインフレは日本の経済情勢、需要と供給のバランスとは全くに関わりのない、海外の戦争、あるいは自然災害などによって、日本が自前で生産できない原材料や燃料の価格が上がることで起きてしまいます。
日本にとっては、避けることができない天災のようなものなのです。

コストプッシュインフレに備える日本経済の強靭化

コストプッシュインフレは、日本にとっては自然災害や天災のようなものです。 もっとも現在では、原油などの輸入先の分散、省エネ技術の発展などにより、当時ほどのインパクトはないかもしれませんが、原材料や燃料の生産が困難な日本にとっては、常に懸念すべき問題であることは間違いありません。

こうした事態は、日本に住んでいる以上避けることはできないのでしょうか。

避けることはできませんが、ダメージを軽減、つまり減災することはできます。
先に挙げた原材料や燃料の輸入先の分散、省エネ・エコ技術の技術革新などもそうですが、最も重要かつ効果的な減災手段は、事前に国民の可処分所得を増やし、貯蓄をさせておくことです。

つまり、賃金が上昇する好景気時、国民に生活に余ったお金を貯蓄してもらい、いざコストプッシュインフレで物価が高騰した際も、国民には貯蓄でしのいでもらい、その間に政府の財政政策によって景気を安定させればよいのです。

つまり、日本経済を好景気に導くこととその安定化は、日本国民の生活を守るために必要な安全保障なのです。

コストプッシュインフレとデフレ

コストプッシュインフレでは、物価が上昇するのに賃金は上昇しません。
企業が生産したモノや提供するサービスの値段が上がるのに、労働者=消費者の賃金は上がらないために、モノやサービスを購入する人が減る、つまり消費が減ります。
結果、需要<供給という状況に陥りやすく、物価を下げる圧力が働きます。
モノやサービスが売れないので、安くして買ってもらおう、というわけですね。

つまり、コストプッシュインフレは、デフレーション(不況)の引き金になる可能性が高いのです。

オイルショックの際、日本政府は物価抑制のために総需要抑制政策を取り、大型の公共事業を凍結・縮小しました。

しかし、このとき日本政府がとった対策は、デマンドプルインフレに対しては物価抑制の効果がありますが、コストプッシュインフレには効果があるのでしょうか。

そもそもコストプッシュインフレは、需要が増えすぎているために起こったインフレではありません。

むしろこの時の政府は、財政出動をして国内の需要を支え、コストプッシュインフレの次に来るデフレーションに備えなければいけない局面であったはずですが、恐らく物価上昇(インフレ)対策=需要抑制という方針によって、却って状況を悪い方向へと導いてしまったと考えられます。 これによって、『欧米諸国は3分の2程度の低下で、アジア諸国はほとんど低下しなかったが、日本だけが長期的な経済成長率が3分の1にまで低下した。』(原田泰)という結果をもたらしました。

消費税とコストプッシュインフレと東日本大震災

さて、今年10月に増税されるか否か注目されている消費税ですが、消費税の増税はコストプッシュインフレと全く同じ効果を経済に及ぼします。
なぜかというと、コストプッシュインフレと同様に、需要と供給のバランスとは無関係に、物価を強制的に押し上げてしまうからです。
無論、物価が上がっても、コストプッシュインフレと同様、企業の利益は増えません
企業の利益が増えないと言う事は、もちろんそこで働く労働者の賃金も増えません
その上、労働者=消費者です。
労働者として賃金は増えず、消費者として消費税名目で政府に金を巻き上げられるというダブルパンチです。
需要、特に個人消費を減らすのに、これ以上効果的な税はないでしょう。

事実、前回の引き上げ時には、あの東日本大震災による需要減の影響を上回るインパクトを上回るダメージを、個人消費、すなわち我々消費者個人の消費に与えたのです。

まさに、セルフ経済制裁と言ってよい政策、それが消費税増税なのです。

消費、すなわち需要が減れば企業の利益も減り、我々労働者の賃金も下がります。
消費税が増税されるたびに、私たち国民は賃金を削られる可能性が高まり、着実に貧乏になっていきます。
当然貯蓄など出来るわけもなく、今後原材料費や燃料費が海外情勢の混乱により悪化した場合、私たちは貯蓄という防御手段を備えることも出来ず、ただひたすら苦しめられることになってしまいます。

我々国民は、これ以上の消費税増税は、決して許してはいけないのです。

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