日本は信頼性が高い社会だと言ったのは誰だったか。 まぁ誰かは日本の事をそう思ってくれているらしい。
確かに、今、自分の暮らしを顧みてもそうだろうなと感じる。
私は生きていく中で、自分に関わる多くの人々を「大枠では」信頼している。 皆さんはどうだろうか。
しかし、現在、安倍政権によって決められてゆく碌でもない政策の数々によって、その財産は毀損されつつあるようだ。
安倍政権の決めた碌でもない政策を考えてみると、TPP11、日欧EPA,、IR法案(カジノ)、入管法改正、農協法改正、漁業法改正、種子法廃止・・・数え上げればきりがない。
さらに、長期政権の故か、彼らの留まるところをみせない疑惑、そして彼らの決定する政策立案に深く関わる政商達。 はっきり言って反吐が出る。
最悪なのは、それらを追求することすら出来ないマスメディアだ。 そろいもそろってゴシップ紙と化している。
この、どうしようもない、今の日本の状況を考えた時、高い信頼性という貴重な財産を、一体いつまで維持することができるか、暗澹たる思いに駆られる。 そう考えている時に見つけたのが、この論文だった。
「信頼社会とは何か : グローバル化と社会的公正からみたEU諸国の一般的信頼」 片岡えみ https://researchmap.jp/?action=cv_download_main&upload_id=94378
一般的信頼が高い社会、すなわち多くの人々が一般的な他者を信頼している国(高信頼国)とは、どのような社会なのかを明らかにしようと試みている。 詳しくは論文を読んでいただきたいが、その結果と考察を紹介する。
つまり、国の社会的公平さこそが、信頼を規定する、もっとも大事な原因だというコトだ。 論文の中では、社会的公正さを指標化する6つの項目が挙げられている。
グローバル化の急激な進展と言う社会的変容が、低い一般的信頼を説明すると言う関係は消え、国の社会的公正さの水準が信頼を規定するもっとも多くな原因であることが明らかになった。もともと経済的発展の遅れていた地域で、急激に経済的、社会的グローバル化が進展したことによって、地域のなかにあった連帯や紐帯が壊れた可能性は検討の価値があるが、そうした現象も国家の社会的公正の度合いと関連していると考えられる。あるいは政治的なグローバル化によって、政府への制度的信頼が薄れる事で、人々の一般的信頼が低下していった可能性がある。 低信頼国の多くでは、社会的公正の6指標のほか、積極的労働市場政策や公衆衛生への支出など、福祉国家的な社会政策は低調であった。これらの社会的政策が低調な国では、同時に自殺率も高く、グローバル化とともに社会的な解体が進んでいった可能性がある。 グローバル化の進展と一般的信頼との間には一定の相関関係があるが、社会的公正の指標ほどには大きな要因ではなかった。本研究の結果から、社会的公正で平等志向の社会を築くことが、一般的信頼を醸成し、高信頼国家に至る道であるといえるだろう。
① 「貧困防止」 貧困のリスク、厳しい物質的はく奪状態、低い収入など10の項目から構成される。
②「平等な教育」 教育政策がどの程度、質的に高度で平等な教育や訓練をしているか、初等前教育への支出がGDPに占める比率、など4の項目から構成される。
③「労働市場へのアクセス」 雇用率、失業率、非正規雇用者の比率、低賃金労働者率などで構成される。
④「社会的結束と非差別」 ジニ係数、国会における女性議員の比率、ニート比率から構成される。
⑤「医療健康」 医療への不満、医療へのアクセス、などで構成される。
⑥「世代間の公正」 年金政策、環境政策、高齢者の対労働年齢人口比などから構成される。
これらの項目について、現在、日本はどうなっているのだろうか。
① 「貧困防止」 貧困のリスク、厳しい物質的はく奪状態、低い収入など10の項目から構成される。
現在デフレ不況にあえぐ日本では、政府の緊縮政策の影響もアリ、国内に需要が少ない。そのため、どうしても企業は海外に目が行くようになる。つまり、企業の投資は海外にゆき、国内に投資が廻らない。さらに国内の企業も規制という盾を失っているため、生き残ってゆくために競争力強化に努めねばならず、どうしても安い労働力を求めるようになる。現在、入管法改正などにより賃金の安い外国人労働者を得る事ができやすい環境が整えられつつあり、いずれ、多くの国民は彼らと賃金競争をするはめとなる。 結果として、皆等しく貧困化する
②「平等な教育」 教育政策がどの程度、質的に高度で平等な教育や訓練をしているか、初等前教育への支出がGDPに占める比率、など4の項目から構成される。
ここでも政府の緊縮政策の影響もあり、家計における教育費の占める割合は年々増加している。 学歴による生涯賃金格差も大きく、多くの家庭で子供たちに高学歴を望むのは、致し方ない状況だ。 結果として、貧困化は進む。
③「労働市場へのアクセス」 雇用率、失業率、非正規雇用者の比率、低賃金労働者率などで構成される。
非正規雇用の職種の拡大など、年々労働環境は悪化している。現在、失業率は過去最低と喧伝されるも、企業が求める職種はその多くが低賃金労働である。 今の安倍政権は、極端な企業重視の政策をとるため、労働政策は企業側に有利に設定される事が多い。 必然的に非正規化、低賃金化が進み、貧困化はさらに進む。
④「社会的結束と非差別」 ジニ係数、国会における女性議員の比率、ニート比率から構成される。
格差は拡大しており、国民間の社会的結束は間違いなく毀損されている。
⑤「医療健康」 医療への不満、医療へのアクセス、などで構成される。
政府のグローバリズム政策、さらに緊縮政策によって、世界に冠たる日本の国民皆保険制度は危機に瀕している。 TPP11や日欧EPA,さらに現在交渉中の日米FTAにおいて、日本は、多国籍企業である製薬会社、保険会社などの利潤拡大への要求を無視できない。 必然的に医療費は高騰し、貧困化は進む。
⑥「世代間の公正」 年金政策、環境政策、高齢者の対労働年齢人口比などから構成される。
金融庁の2000万円事件から考えても、年金政策がまともに機能しているとは、国民の誰も思っていない。 老後の不安は増大し、厭世的な気分が日本中を覆っている。
社会的公平さを指標する6つの項目全てにおいて、日本は今、壊滅的な状況を迎えていると言えるだろう。 つまり、遠からずこの世界から高信頼国日本はなくなり、皆が猜疑心に包まれた低信頼国日本が存在することになる。 将来の日本の子孫たち(その頃には日本人という民族が多くの人種によって構成されているかもしれないが)から、罵倒されるような事態を免れるために、なんとしてでも、この事態を改善しなければならない。
その決意を示す機会はもうすぐやってくる。