来たる純粋機械化経済が、主流派経済学の誤ちとMMTの正しさを実証する!

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「人工知能を制する者は世界を制す」
この書き出しから始まる本、「純粋機械化経済 頭脳資本主義と日本の没落」(井上智洋氏著)を読んで、このエントリーを書いています。

人類は近い将来、人工知能技術の発達(汎用AIの発明)により、『純粋機械化経済』と呼ばれるステージに突入することになる、と言われています。

『純粋機械化経済』とは、これまでの機械と人間の労働力に代わり、AI・ロボットによる高度なオートメーションにより生産活動を行う経済のことです。

(上図は井上智洋氏著『人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊』より引用)

これまでの機械化経済では、人間の労働力が経済成長(生産規模)のボトルネックになっていましたが、AIやロボットは自分自身をいくらでも再生産できるので、生産規模をいくらでも拡大できます。『純粋機械化経済』はこのようにして、供給能力を爆発的に拡大することができます。


この『純粋機械化経済』を達成した国と達成していない国の間で、第二の『大分岐』が起きるのではないかと考えられています。

『大分岐』とはもともと歴史学者のケネス・ポラメンツがその著書『大分岐』で提唱した用語で、産業革命により世界が豊かな地域(西欧)と貧しい地域(その他)に分かれたことを指します。

西欧、特にイギリスは世界に先駆けて産業革命を実施し、テイクオフ(伝統的な社会から工業社会への決定的な転換)ができました。これにより、イギリスは世界の覇権を握り、ヨーロッパはアジアやアフリカを植民地にすることができたのです。

(同じく井上智洋氏著『人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊』より引用)

この『大分岐』が『純粋機械化経済』への到達により21世紀に再び起きるのではないか、というのが第二の大分岐論です。

『純粋機械化経済』の提唱者である井上智洋氏の試算によると、『純粋機械化経済』では経済成長『率』が指数関数的に増加します。つまり、経済成長率が2%→5%→10%→・・・と、年を経るに連れて急激に拡大していくのです。

そして前回の大分岐のイギリス同様、最初に第二の大分岐をテイクオフした者が世界を制するのです。この最初の第二の大分岐は2030年頃に起きると、井上氏は予測しています。

(同じく井上智洋氏著『人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊』より引用)

ただし、この経済成長率はいわゆる潜在GDPであり、需要側を無視したものです。
供給能力の拡大はデフレ圧力であり、『純粋機械化経済』では年を経るごとにデフレ圧力が強まることを意味します。
純粋機械化経済のピースが揃っても、潜在供給能力の急激な増大に重要が追いつかず、テイクオフに至らない可能性がある、と井上氏は指摘しています。それどころか、日本の「失われた20年」よりも遥かに深刻なデフレ不況に陥るとも指摘しています。
テイクオフを起こすには、莫大な需要、即ち政府の莫大な財政赤字が必要不可欠なのです。

テイクオフを果たしても別の問題が発生します。技術的失業者の増加です。
生産活動に人間の労働力が要らなくなるのですから、当然失業者が大量に発生します。

これらの問題に対して、主流派経済学の批判者でもある井上氏は2つの対策を示しています。

1つはマネーサプライを増やす政策(ex.ヘリコプターマネー)、もう1つはベーシックインカムです。
ヘリコプターマネーは、財政政策と金融政策を組み合わせることで、貨幣を民間経済主体(家計・企業)に直接給付してマネーサプライを増大させます。
ベーシックインカムは再分配政策でもありますが、『純粋機械化経済』で失業し所得を失った人々に対して給付することで、消費需要を高めます。
これらの政策により、需要を高め、失業対策を行う、というのが井上氏の提案です。


ここで、現在脚光を浴びているMMTで『純粋機械化経済』の問題点を分析してみましょう。

第一の問題点である需要の問題は、MMTの基礎理論であるSFCモデルで分析ができます。
MMTの考えでは財政赤字が普通の状態です。なぜなら、資本主義経済では供給能力は拡大するため、インフレ率を保つために民間の金融資産を増やす必要があるためです。民間の金融資産を増やすには政府の財政赤字が必要になります。(外国を捨象すれば)民間の純金融資産の増加分=政府の財政赤字の増加分になるため、財政赤字が普通の状態なのです。

実際の対策には、OMFや国債発行による、的を絞った財政支出(Target Spending)になるでしょう。
Target Spendingでは、商品・サービスの個々の供給能力を見極めて支出をします。すなわち、供給能力が需要より低い商品・サービスに対しては程々に、供給能力が需要より高い商品・サービスに対しては大きく財政出動をすることで、インフレ圧力を安定させます。

第二の問題である技術的失業は、MMTの代表的な政策提案であるJGPで対策が可能です。
JGPは、国が労働を希望する人全てに対し職を保障することで、事実上、失業を失くすことができます。また、不況の時は雇う人数が増えるため財政支出が増え、好況の時は雇う人数が減るため財政支出が減るので、経済の自動安定化装置、再分配装置になります。人々の所得も失われず、消費需要も安定します。


一方、今の世界の常識である主流派経済学ではどうでしょうか?

主流派経済が理想とする均衡財政では、莫大な政府財政支出は禁忌とされているために深刻なデフレに陥り、第二の『大分岐』のテイクオフができないでしょう。
主流派経済の誤ちに気づいた国からテイクオフがなされ、第二の『大分岐』が起きます。
主流派経済の誤ちに気づかない国の経済は一方的に引き離されるでしょう。
それだけでなく、テイクオフした国から安くて質の良い商品やサービスを購入することになり、国内企業の収益が減り、国内経済は縮小(シュリンク)します。失業者も大量発生するでしょう。
経済面だけでなく、安全保障面も重大な危機に直面します。テイクオフした国との軍事力の差は量・質ともに引き離される一方になるでしょう。
主流派経済学の軛から脱することが第二の『大分岐』の必要条件なのです。

『純粋機械化経済』の到来は、主流派経済学の誤ちを実証するでしょう。

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