「入管法改正」が採決される国会の檀上において、彼はこう叫んだ。
「賛成するものは二度と保守と名乗るな!保守と名乗るな!官邸の下請け、経団連の下請け、竹中平蔵の下請け。
この国に生きる人々を低賃金闘争に巻き込むのか!世界中の賃金闘争に。
恥を知れ!二度と保守と名乗るな!保身と名乗れ!保身だ!!」
賛成する者も反対する者も、淡々と、信じられないほど淡々と票を投じてゆく中、彼一人が、この事態に全力で抗っていた。
彼を快く思わない者は彼のことをパフォーマンスの政治家だと批判する。だが、この国の未来に大きな禍根を残すであろう法案が採決されようとする、まさにその時に、パフォーマンスの一つも出来ない政治家に、この先一体何が期待できると言うのだろうか。
彼の立ち上げた「れいわ新選組」は、8つの緊急政策を掲げている。
- 消費税は廃止
- 全国一律最低賃金1500円「政府が補償」
- 奨学金徳政令
- 公務員増やします
- 一時産業戸別所得補償
- 「トンデモ法」の一括見直し・廃止
- 辺野古新基地建設中止
- 原発即時禁止・被ばくさせない
財源はどうするのか?
日本総貧困化を防ぐためには、まとまった財源が必要です。
財源は税収、が一般的ですが、私は、
デフレ期には別の財源も活用します。
新規国債の発行です。確実に足りない分野と人々に大胆に、
財政出動を行い、生活を支え積極的に経済をまわします。
経済成長すれば当然、税収は増えます。
国債発行は無限ではありません、リミットがあります。
インフレ目標2%に到達するまで、です。
到達後、金融引き締めで増税まで必要な場合には、
税の基本(応能負担)に還ります。
法人税にも累進性を導入します。
山本議員は、掲げた政策の実現に、かつての民主党政権が行った「事業仕分け」に象徴されるような、今ある財源の中から必要な分を振り分けるといった考え方を完全に排除した。
「経世済民」、まさにこの言葉通り、政治とは、その国の国民の為に行うモノであると信じる者にとって、もはや彼は唯一の希望と言える。
何を言っているのかと鼻で笑われるかも知れない。
なにしろ彼は、彼自身が立ち上げた、彼一人しかいない政党の党首であり、すなわち未だ吹けば飛ぶような政治家の中の一人でしかないのだから。
そのような人物に希望?
一体、気は確かかと思われるかも知れない。
実は山本太郎議員と同じように積極財政、消費税減税を唱える政治家は自民党にもいる。
その政治家は「日本の未来のための勉強会」なるものを開催し、積極財政派の三橋貴明氏、中野剛志氏、藤井聡氏などを講師として呼び、自民党内において積極財政を唱える仲間作りに努めている。
ゆっくりとではあるが自民党内にも積極財政を唱える勢力は増えつつある。
だが、あえて言う。私は彼に期待しない。
彼と彼の仲間達には何も期待しない。
今、山本太郎議員は、彼の新党「れいわ新選組」を立ち上げて全国を回っている。
その街頭演説の中で、「なぜ、小沢さんと別れたのか?」「あなた一人で何が出来ると言うのか?」と問う人に、彼はこう答えた。
「自分一人が勝つためだったら、小沢さんと一緒にいます。
自分一人だけのキャリアを考えるだけだったら、小沢さんについていきます。
ただ、この国が壊れていく、その速度を待てますか。私が政治家として一人前になれるっていう20~30年を待てますか?
子供の7人に1人が貧困って言いましたよね。全体の55%が苦しいと言う状況にされてて、1人暮らしの女性の3人に1人が貧困という状況にされてて、今、貯蓄ゼロっていう20代が60%超えてて、30代40代でも40%超えてて、将来高齢化した後、国、切り捨てるしかないんですよ。野垂れ死にですよ。
これを私が自分のキャリアを深めるために小沢さんのそばについて10年20年政治を勉強し続けて、政治を勉強しますって言ったら、今の自民党の若手と一緒なんですよ。今の自民党の若手は何か。
働き方がぶっ壊されたり、外国から外国人労働者が大量に呼べるようになったり、TPPを締結したりとか、この国をぶっ壊すような事に賛成し続けているんですよ。
理由は何?自分のキャリアを潰したくないから。ここで総理がやっている事に反対するなんて言ったら、次、自分の目がないから。
そんな人間にこの国救えるかよ。」
積極財政を唱える、その自民党の政治家は、入管法の改正によって大量の外国人労働者が日本に入ってくる事態が引き起こすであろう危険性に気付いていた。なにしろ、チャンネル桜というネットメディアの討論会において、その危険性を訴える識者の発言にふれ、大いに理解を示していたのだから。
ただ、結果として彼は、淡々と賛成票を投じた。そして彼の仲間もまた、淡々と賛成票を投じていったのだ。
彼も、彼が集めた仲間達も皆、自分のキャリアを守りたかったようだ。例え、将来、この国の国民が、自分達の賛成したこの法案によって引き起こされる事態によってどれほど苦しむことになろうとも。
確かに同情の余地はある。山本議員の言う通り、彼らの属している政党は政権与党であり、彼らの今の立場や地位は、その政党によってもたらされモノだからだ。万が一にでも、上層部からにらまれるような事にでもなれば、彼らの築いてきた政治家としてのキャリアは潰れてしまうかもしれない。
しかし、今や我々日本国民は、そのような彼らの、極めて個人的な、我々からみればひどく利己的に映る理由、だが彼らにとっては非常に大きな理由などに付き合っている暇はない。彼らが、彼ら自身のキャリアを失う事ができないのと同じように、我々一人一人にも失う事のできない大切なモノはあるのだから。
山本議員は、まさに日本政治史における一大転換点にいる。
確かに失敗するかもしれない。だが、一昔前と違い、成功する可能性は決して低くはない。
今の日本国民は、数々の悪法を自分達の数の力でごり押しし成立させる政権の傍若無人さに不満が充満している。
なにより安倍総理を始めとする政治家の腐敗(日本国民の多くがその腐敗ぶりを確信している)、さらには高級官僚の腐敗ぶりを、まざまざと見せつけられている。そして、権力者に迎合しようとするメディアや識者や芸能人の浅ましい姿を日々多くのメディアで目の当たりにしている。
しかし、多くの国民は、自分自身や家族の生活を守る為に、経済政策の確かな方、もしくはそう思える方に投票し続けた。なぜなら、既存野党の掲げる経済政策は、かつての民主党政権が掲げていた政策と、ほとんど変わらないように見えるからだ。
だが、アベノミクスなどという本来あるべき姿とは全く違う政策を声高に叫び続けて、早もう7年、もはやその詐欺師まがいの政策の欺瞞に、多くの国民が気付き始めた。さらに、そこに消費税10%増税が刻々と近づいている。
可能性は低くはない。
なにより経済通念が変わりつつあるのが大きい。
とにかく「国のシャッキンがー」などと言っておけば、皆が黙って従ってくれていた時代は、もはや終わろうとしている。
三橋貴明氏、藤井聡氏、中野剛志氏、松尾匡氏などが提唱していた、自国通貨建国債を発行している国の借金は心配する必要はない、といった考え方が、多くの人々に浸透し始めたのだ。
さらにはアメリカにおいてMMT(現代貨幣理論)なるものが論争を呼び、日本人の言う事は聞かないが、アメリカ人の言う事は何でも聞く日本人の悪弊とも相まって、ますます、今までの経済通念への疑念が大きくなっている。
MMT(現代貨幣理論)の考え方を、三橋貴明氏の「新経世済民新聞」より引用させていただくと。
1.自国通貨建て国債しか発行していない国は、財政的な予算制約はない
2.ただし、供給能力(インフレ率)という国債発行の上限はある
3.誰かの黒字は、誰かの赤字。誰かの赤字は、誰かの黒字。
4.政府は国債発行で日銀当座預金を借りており、政府の国債発行は家計の預金を増やす
5.政府はOMFにより徴税や国債発行無しで支出が可能(スペンディング・ファースト)
まさに山本太郎議員の考え方ともかなり近い。
人はその時代の空気の中で生きている。それは経済通念も同意である。
今までの政治家は、「国のシャッキンガー」という時代の空気の中で生きていくしかなかった。だから、それを責める事は誰にも出来ないだろう。だが、時代は変わる。経済通念もしかりである。今までの時代の空気の中で、それを推し進めた者達には退場していただくしかない。
そして、これから先は、山本議員のような政治家によって、新たな時代の空気が作られてゆく。
「れいわ新選組」を立ち上げた山本議員は、国会で戦う力を与えて欲しいと寄附を募っている。
その寄附の多寡によって、その挑戦の内容を変えるのだと言う。
非常に残念なことだが、政治にはお金がかかる。それが現実だ。
彼に、今のこの「腐敗」が進んだ日本の政治を変える力を、少しでも日本の「破滅」を遅らせる力を、彼にそれを為す力量と、それを行い続ける誠実さがあると、どれだけ多くの日本国民が信じるか。
非常に楽しみである。
私個人としては、入管法改正の採決の、あの壇上において、山本太郎議員があの言葉を叫んだ。
全国会議員の中で、彼のみがそれに全力で抗う姿勢を見せてくれた。
その姿を見た時、私は、彼に一つ借りを作った気持ちになった。
受けた借りは、なんとか返したい。そう思っている。
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