今年の日本経済はコロナ禍一色で、大手企業でもリストラや給与引き下げ、ボーナスカット、失業、新規採用停止が横行するなど景気の悪い話ばかりでしたが、そんな中で唯一輝きを放ったのが週刊少年ジャンプに連載された”鬼滅の刃”でした。
ご存じのとおり、少年ジャンプの三原則といえば「努力・友情・勝利」が有名ですが、これはいかにも昭和くさいというか、平成・令和世代の感覚では古臭い前時代の根性論や理想論にしか聞こえないでしょう。
ですが、鬼滅の刃はジャンプの王道路線をきちんと踏襲したうえで平成・令和世代の読者の心を揺さぶり、見事に空前の大ヒットを飛ばしました。
本当に凄いことですね。
さて、漫画やアニメ業界で”努力・友情・勝利”路線がヒットしたのとは裏腹に、経済社会ではいまだに平成の悪癖たる「我慢・残業・低賃金」あるいは「自助・負担・敗北」という精神論が罷り通っています。
『私がベーシックインカムに反対なわけ』(岡本 裕明/会社経営者)
コラムのタイトルを見ただけで岡本氏の経済観念の程度や古臭さが窺い知れますが、今回は、上記コラムから彼の言説を抜粋し、そのいい加減さや誤りを指摘していきます。
(岡本氏)
「そもそもベーシックインカムは年金制度を無くしてその代わり全国民に最低限の生活できるであろうお金を毎月政府が振り込んでくれるという発想です。」
↓
これは出だしから間違い。
正しくは、
「そもそもベーシックインカムは、平成不況を招いた時の政権の経済失政により国民が負わされた所得や資産の逸失分を補填するとともに、その間の不況期に生じた大規模な需要(所得)不足による将来的な供給力崩壊というリスクを回避するため、既存の年金制度を温存したまま、政府が国民に対して一人〇万円/月の定額給付を超長期間にわたり行うという発想です。」
となります。
竹中式のエセBI論を唱える輩も、はたまた、岡本氏みたいにBIに反対する輩も、こぞって「BI=年金をはじめとする社会保障制度の代替策」だと偽り、社保制度解体を訴えますが、そんな愚論は頭ごなしに否定すべきです。
既存の社会保障制度を温存しつつ、例えば、家計や企業の社保負担の軽減(国庫による半額負担)、年金支給年齢の引き下げ(60歳より支給開始)、国民の医療費負担の引き下げ(国民負担を5-10%に)、難病治療費の国庫全額負担など、それらが国民にとってより良くなるよう改正を図りながら、BI導入により、これまで減るに任せてきた国民の実質所得の回復を図るのが正解です。
(岡本氏)
「金持ちも貧困者も全員差別をつけないのが前提です。そもそもこの段階で同意できるでしょうか?今回、コロナで政府から各種支援金が出ました。海外でも同様です。ところが不届き者が不正に取得しているだけではなく、金持ちなのに「なぜ、あなたが?」という人も支援金を貰っているのです。」
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別に全国民をBIの対象にする必要はありません。
BIと聞いただけで、「竹中やホリエモン、元ZOZOの前澤、滝クリ&小泉Jr.に配るのか~」と文句を言うバカも見かけますが、超富裕層や富裕層にまで義務的に配らずとも、例えば確定申告レベルの年収(2,000万円)を目安に制限のバーを設ければ済む話です。
「金持ちにまでBIを配るのか(# ゚Д゚)」と他愛もない不満をぶつける輩は、いったい何のために国が個々人の所得を把握していると思っているんでしょうか?
そのほか、犯罪者(起訴中も支給停止)や日本国世紀を持たない外国人、在日特権を振りかざすクズ、竹中みたいに意図的に住民税逃れをしている脱税予備軍辺りを支給対象から外せばよいでしょう。
(岡本氏)
「生活保障を政府が延々と続けられるか、と言えばそんな財源が何処にあるのでしょうか?日本が消費税25%を受け入れますか?(略)感覚論ですが主たる財源を消費税と考えればベーシックインカムを導入するためには消費税を50%ぐらい取らないとやりくりできないのではないでしょうか?そうなれば当然ながら消費は萎み、経済は止まります。」
↓
「BIのせいで消費税率が爆上がり」という”BI財源=消費税起源論”は、
「BIのせいで社会保障が無くなる」
「BIのせいで公共投資財源が無くなる」
「BIのせいでハイパーインフレになる」
「BIが所得格差を拡大させる」
「BIのせいで日本人が働かなくなる」
と並ぶ大バカ論の一種です。
およそ、BIに限らず、経済政策の財源を税だけに求める発想こそ、中世ヨーロッパ以前の黴の生えた時代遅れも甚だしい愚論です。
消費税による国民負担は累計で400兆円近く(1989-2019)にも達しているのに、これ以上の負担を求める方がどうかしています。
BIの本質は、
①政府による経済失政のツケ払い
②需要不足に起因する供給力(国富)崩壊を防ぐための需要喚起策
③所得の伸びが長期間止まってしまったことにより国際競争力が落ち込んだ国民消費力の回復
にありますから、その財源を国民負担に求めるなんて、そもそも筋違いです。
BIの財源は消費税ではありませんし、所得税や固定資産税でもありません。
その財源は、政府による貨幣増産や国債増発、日銀による国債直受により、必要なだけ創り出せばよいのです。
(岡本氏)
「経済活動とは働き、生産し、それを消費するというサイクルが回り続けることで豊かな社会が実現します。なぜ、このサイクルを回すかといえば回すスピードが速くなればなるほど皆が幸せになることを体得しているからです。(略) もしもベーシックインカムを導入した場合、このサイクルの回転率はどんどん下がる可能性があります。なぜなら自分で回さなくても果実を取得することができるからです。」
↓
岡本氏みたいな昭和脳の持ち主は、「一生懸命働けば必ず買い手がつき、給料も増えてみんなハッピー」と妄想しがちですが、彼のいう「経済活動とは働き、生産し、それを消費するというサイクル」のうち、”消費”というサイクルが完全停止したままという現実に、なぜ気付けないのでしょうか?
消費増税とコロナ禍によるダブルパンチで名だたる大企業が一斉にリストラに走ったのは、巷の経済活動で消費が止まってしまったことによるものです。
要は、「いくら頑張ってもモノが売れない、どこにも買い手がいない」という簡単明瞭な事象で、それを惹き起こしているのは、長引く不況による国民の所得不足にほかなりません。
彼は、BIで国民の所得が増えると”労働→生産→消費”というサイクルの回転率が下がると、まったく馬鹿げたことを抜かしていますが、BIにより安定的な所得補填を得た国民の消費行動がどう変化するかなんて誰の目にも明らかです。
「BIにより毎月の収入が数万~十万円単位で増える国民は、いまよりもっとお金を使うようになりますか?」と小学生に問えば、100人中100人が「YES」と答えるでしょう。
消費が増えれば、生産に対するニーズが増え、そこに携わる労働の価値もUPするわけですから、国民の労働意欲も増すに違いありません。
BIと言っても、一人毎月100万円も貰えるわけじゃありませんから、国民はこれまで同様働く必要がありますが、少なくとも家賃や住宅ローン分くらいに相当する金銭的補償を得られるわけですから、所得不足に対する不満や生活苦への不安がかなり解消され、まずます張り切って働けるでしょう。
(岡本氏)
「日本は神道の国です。神々が皆働いていたのです。それなのにベーシックインカムを取り入れるという発想自体が日本的ではありません。汗をかく、その対価を貰うという経済のサイクルを回したからこそ、世界3位の経済レベルをいまだに維持していると考えるべきだと私は考えています。」
↓
国民を過重労働で扱き使い大量の汗をかかせておきながら、まともな対価すら払おうとしないクソ経営者どもが跋扈する日本のどこが神道の国なんでしょうかね?
働き盛りの30-40歳代の平均収入が右肩下がりの国なんて、先進国と呼ばれるのも恥ずかしいくらいですよ。
国民が搾取と負担ばかり課され、ちゃんとした対価を受け取れないのを黙って見過ごす神々って、本当は地獄の悪鬼なんじゃないですか?
日本がGDPの規模で中国に追い抜かれ、国民の所得水準も他の先進諸国から後れを取るまでに落ちぶれたのは、”汗をかく、その対価を貰うという経済のサイクル”がまったく正常に回っていなかったからにほかなりません。
BIという制度は、労働対価の著しい欠損を補填し、需要力や消費力を回復させて経済サイクルを正常に回すブーストなのです。
国民にカネを渡さずして、経済サイクルを回すことなど絶対に不可能です。
神道の国とか、汗をかくとか、一文にもならぬきれいごとを並べて悦に入る昭和の遺物はいますぐ退場すべきです。
いま必要なのは結果であり、消費力の回復という結果を出すには、精神論や根性論など有害無益な愚策でしかありません。
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