積極財政論に限界なし

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積極財政を支持する方々(それ自体が世論形成において未だ超少数派であるのは否めませんが…)の中でも、特にMMT理論を信奉する方は、いわゆる“租税貨幣論”を強く信仰しています。

この租税貨幣論とは、“貨幣は政府にとっての負債である”という「貨幣負債論」とセットで語られており、

『貨幣が流通するのは税が存在するからだとする説である。簡単に言えば、政府通貨に徴税という最終消費先を用意することで経済に通貨が組み込まれると説明される。(略) 政府は徴税する権利を後から得るために先に政府の負債(権利の前借り)として通貨を発行し、通貨を手に入れた国民は政府の負債(通貨)で同額の政府の徴税権を打ち消すのである。(略)ようするに、納税という国民の義務(懲罰付き)を解消するという機能があるからこそ通貨は政府の負債であり、通貨が政府の負債であるからこそ通貨は国民にとって財産となる。(略) 政府は通貨を一方的に押し付け、一方的に徴収しているだけであるが、その強制力が通貨に流動性を生む。[ニコニコ大百科より]』

といった説明がなされています。

私は、進撃の庶民の投稿記事や自ブログの過去記事において、たびたび租税貨幣論や貨幣負債論を強く批判してきました。

なぜなら、

「租税貨幣論は、円の信認を護るためには徴税強化が必要あり、徴税という行為を実体経済における貨幣流通の中核構造に位置付けるかのような非常に危険な誤解を与えてしまう」

「貨幣負債論は、所詮は政府の負債となる(=将来的な徴税負担が重くなる)貨幣の発行や流通量をむやみに増やすべきではないという誤ったメッセージを流布してしまう」

という結論にしかならないからです。

租税貨幣論も貨幣負債論も、とどのつまりは、

・政府の徴税権(=国民への過度な負担のゴリ押し)を正当化し、

・貨幣の信認を維持するには税に対する信仰が必要だと唱え、

・貨幣に“負債”という負のイメージを植え付けることで、その増大を抑制しようとする勢力に加担する

ことにしかなりません。

要するに、そのような妄言を信じる者は、徴税強化と歳出抑制にご熱心な増税緊縮派の御先棒を担いでいるに過ぎない、つまり、増税緊縮論の布教活動に利用されているとしか言えません。

先日も、とあるTwitterで、MMT論者と思われる方が、こんなツイートを連投していました。

「「消費税に代わる財源はどうする」という意見は、「信用に基づき通貨を発行する制度の下では、税は財源ではない」ということに気が付いていない議論です。税は通貨の信用を維持して実効的に流通させるための手段です。日本政府が円で徴税すれば、国民は必然的に円を経済活動に使わざるを得ないので。」

「では財源はどうなる、といえば国債です。信用通貨は国債とペアで無から発生させます。で、通貨は経済活動に使い、国債は余剰な貨幣を回収して消滅させる経済のバッファとして機能します。同時に利率付きの国債は「未来もこの通貨を増やして発行し続けるよ」という約束となり通貨の信用を保証します。」

「「それでは通貨は国家が刷り放題ではないか、財政規律はどうなる」と飛んできそうですが、もちろんそんなうまい話はないです。通貨発行し放題をやったら、社会に存在する財より通貨がずっと多くなって通貨の価値が下がり大きなインフレが起きます。」

「ただしインフレは経済成長に必須です。貨幣の価値が継続的に目減りすると「溜め込むより使ったほうが得」となり経済活動が促進されるので。適切なインフレ率は年2%と判明しています。ただしインフレには貨幣供給過大で起きるインフレと、財の供給過小で起きるインフレがあるので、区別が必要です。」

彼のツイートをかいつまんで説明すると、

  • 徴税に使われるからこそ、みんなが“円”を経済活動に使うんやで
  • 通貨(円)ってのは、政府が民間経済に借金(国債発行)して初めて生まれるんや
  • 通貨はむやみに発行したらアカン。そんなんしてたら、円の価値が下がってまうやないか
  • せやけど、インフレが起きんと「待っとったら値上がりするかもしれんから、いまのうちに買っとこ」とはならんから、2%くらいのインフレは経済に必要なんや!

といったところでしょうが、こんなので経済や貨幣に無知・無関心な多くの国民を納得させることができるのでしょうか?

「徴税」、「国の借金」、「財政規律」、「通貨の価値」、「大きなインフレ」…

こんな危ないワードを並べ立てておいて、納税負担増やインフレに怯える国民に、国債増発による積極財政論を納得させることなどどう見ても不可能でしょう。

これは、「起き得るリスクを事前に説明する」というよりも、「リスクイメージを無暗に膨張させ、それを聞く者に過剰なプレッシャーを与える」無謀な行為でしかありません。

過去にもリフレ派のようなエセ積極財政派が金融緩和政策一本足打法に固執してインフレ率2%のインフレ・ターゲット論を掲げ、日銀当座預金と既発債との両替に勤しんできましたが、国民経済にプラスのインパクトを何ひとつ残せぬまま敗北し、蓋を開けてみれば、コストプッシュ型の悪性インフレが起きただけという体たらくで、多くの国民は良性のインフレと悪性のインフレの見分けすらつまぬまま低賃金下の物価高に悩まされ、いまや「インフレ=すべて悪性」というイメージがすっかり刷り込まれています。

こんな状況で、徴税だの負債だのと貨幣にマイナスのイメージを刷り込ませ、さらに貨幣発行や歳出拡大に端からブレーキを掛けるような“おっかなびっくりの積極財政論”なんて、国民の支持を得られるはずがありませんよ。

“アクセルとブレーキのちょい踏みレベル”の若葉マーク付きみたいな初心者の提言を、いったい誰が信用しますかね?

・世に金納(=徴税)が普及する遥か昔から貨幣は流通いていたという史実があること。

・貨幣の価値や信用は、その素材や納税という制度によって担保させるのではなく、法定通貨であるという事実と、実体経済下で現に使用されるという事実によって担保されること。

・貨幣の発行・流通は、国民の所得や富を増やして実体経済に莫大な需要を生み、その需要を追いかけようとする供給サイドの意欲向上や高度化を加速させ、経済そのものの膨張や拡大、技術・生産・サービスを飛躍的に発展させるプラスの効果を生むこと。

こうした史実や事実を鑑みれば、積極財政論者は、経済を前進させるためのツールとしての貨幣活用に、もっと自信を持てるはずです。

総務省が公表した10月分の消費者物価指数は、総合指数で対前年同月比+3.7%、コアCPI+3.6%、コアコアCPI+2.5%と今年の春以降、続いてきた物価上昇ペースがさらに加速しています。

さらに、電力やガス各社が二桁増レベルの大幅な値上げを政府に申請するなど、家計の圧迫は火を見るより明らかです。

一方、この期に及んで政府から出てくるのは、なぜか増税や社保負担増の話ばかりで、減税や社保負担軽減、給付金のような国民ニーズの高い話題は完全にスルーされています。

このまま増税緊縮政策を強化されると、“失われた30年”どころか、50年、100年へ悪化し、日本は完全に後進国落ちを免れません。

いま必要なのは、平成・令和を漆黒の闇に叩き落した経済敗戦から立ち直るための超積極的な財政政策を強力に訴えることです。

貨幣という誰の負債にもならない国民の共有財産を積極的に供給する、それも、公共事業や社会福祉政策などを通じて供給サイド経由で供与するこれまでのルートに加えて、消費税の廃止や社会保険料負担の国庫負担化、継続型給付金の導入などといった手段を新たに構築し、需要サイドへ直接的に供与して経済活動を需要サイド・供給サイドの両面から強力に刺激する必要があるでしょう。

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門前小僧
1 ヶ月 前

藁人形叩きが好きなら止めやせんけど、ニコニコ大百科とか読んでないで、いい加減翻訳本でいいからMMTerの書いた本読んでくれんかね恥ずかしい。

当ブログは2019年5月に移転しました。旧進撃の庶民
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