大変お世話になっております。
反逆する武士
uematu tubasaです。
初回投稿日時:2022年11月3日(令和4年11月3日)
本日はイギリスの経済対策に関して大雑把にまとめた記事になります。
なぜイギリスのトラス前首相は辞任に追い込まれてしまったのでしょうか。
なぜならば、政策と経済の現状がミスマッチしていると考えた市場関係者が多いからです。
法人税の増税計画廃止と所得税と印紙税の減税
クワーテング氏は9月23日、大幅な政府借り入れを前提とした450億ポンド規模の減税政策「ミニ・バジェット(小さな予算)」を発表。
引用元:英財務相、減税政策で「Uターン」 45%の所得税率の撤廃案を撤回
所得税や住宅購入の際の印紙税を減らすほか、法人税の増税計画も廃止するとした。
イギリスのクワーテング財務相は大規模な減税政策を発表しました。
所得税や住宅購入時の印紙税を減税し、法人税の税率引き上げ計画を廃止するそうです。
イギリスでは、インフレが加速しております。
直近三カ月において、消費者物価指数は前年同月と比べて10%程度上昇しています。
※参考:イギリスの消費者物価指数
物やサービスへのアクセスが困難になっております。
したがって、インフレ抑制策が必要です。
供給力の拡大が必要であり、それを促す政策が求められます。
率直に申し上げて、法人税の増税計画はそのままで、設備投資減税や賃上げ減税を盛り込むのが一番効果的だと思います。
インフレ抑制に貢献する企業には減税の恩恵を
増税のメリットとは、節税意欲の増進です。
したがって、設備投資や賃上げで節税に動く民間企業が増えることでしょう。
一般庶民の購買力を高めるためには、給与水準を引き上げるべきです。
そのために、給与水準を引き上げた民間企業には減税という恩恵を与えます。
減税措置で、設備投資を促すことで、供給能力を拡大します。
その供給能力の拡大で、需要を満たせるようになるので、インフレ抑制になります。
印紙税に関しては、住宅購入時の税金のようなものです。
それを減税対象とするのは当然ですね。
なぜならば、住宅購入の罰金を減らして、住宅の需要を喚起するべきだからです。
問題は、所得税でして、これがひと悶着あったようです。
所得税の最高税率の引き下げは悪手である
今回撤回されたのは、年収15万ポンド以上の人に課されている45%の所得税率を撤廃し、一律40%にする案。
引用元:英財務相、減税政策で「Uターン」 45%の所得税率の撤廃案を撤回
生活費が高騰する中で不公平を生むものだと非難を浴びていた。
所得税とは、文字通り所得に対する累進課税です。
景気の自動安定化装置(ビルトインスタビライザー)として機能しております。
けれども、最高税率引き下げで、高額所得者が物やサービスを購入しやすくなってしまいます。
イギリスの一般庶民の生活を楽にすることを目的にした減税にするべきでした。
最高税率を引き下げるのは間違いです。
この所得税の最高税率の引き下げ案は撤回されたそうなので、イギリス政府の柔軟さにまずは拍手するべきでしょう。
所得格差を助長する所得税の最高税率引き下げは悪手と言えます。
このような金持ち優遇とイギリス国民の分断を煽るようなことは慎むべきかと。
イギリスは光熱費の上限額を設定か
ロシアのウクライナ侵攻の影響を受けたエネルギー価格の高騰や10%を超すインフレで、国民は「生活費危機」に苦しむ。
引用元:イギリス・トラス新政権、減税政策発表後にポンド急落 「トラスノミクス」に批判続出で前途多難
女王が死去する数時間前には、家庭の光熱費の上限を10月から年2500ポンド(約41万円)に固定する救済策を発表。
21日には企業や商店の光熱費に上限を新設することも決定した。
やはり、欧州各国はウクライナ侵攻の影響を多大に受けているようです。
家庭の光熱費の上限を10月から年間で2500ポンドに固定する救済策を実施するそうです。
また、2022年9月21日時点では企業や商店の光熱費に上限を新設する予定でした。
イギリスの経済対策規模が過大なのではという懸念を市場関係者は抱いているようです
しかしながら、その経済対策にインフレ対策費が盛り込まれているならば、問題ありません。
インフレなのに減税とは、政策が真逆なのではと考える市場関係者が多いようです。
今回のインフレはコストプッシュ・インフレ(費用増大型物価上昇)と言います。
そのコストプッシュ・インフレの場合、物やサービスが一方的に値上がりしてしまい、必要な物やサービスを購入できないのが問題なのです。
冬厳しいのに、灯油が買えないようなものです。
その結果、深刻な健康問題を引き起こす可能性もあります。
光熱費の上限額を設けるなどして、家庭負担を軽減する政策こそ必要なのです。
インフレ抑制策の仕組みを細かく分析すると・・・
その支援策には、政府が保証する融資をエネルギー供給業者に提供し、供給業者は家庭の負担額を凍結する、もしくは引き下げる仕組みが盛り込まれる見通し。
引用元:トラス英保守党党首、エネルギー危機対策を約束 6日に新首相就任へ
融資返済は今後10~20年かけて、利用者への請求額を通じて返済していく仕組み。
イギリスが補助金を出して、エネルギー供給業者に提供する代わりに、一般家庭の光熱費負担を軽減するわけではないようです。
補助金として支給するのではなく、融資なのです。
しかも、返済資金は将来のイギリスの一般家庭への請求額から確保するとのこと。
要するに、このインフレ抑制策は資源価格高騰に伴う費用負担の先送りのようなのです。
緊縮財政の影響を受けたトラス前首相はできるだけ政府支出をしたくなかったようです。
赤字財政が増えないようにしたかった模様です。
エネルギー供給業者の効率的な供給を後押しする政策が必要でした。
例えば、補助金の支給やエネルギー取引に関する各種税制を一時的に0%にするということが考えられます
経済対策の3分の1以上がインフレ対策
一方、トラス首相が今月上旬に表明した、家庭と企業の光熱費の抑制策をめぐっては、半年間でおよそ600億ポンド、日本円でおよそ9兆5000億円を拠出する必要があると明らかにしました。
引用元:イギリス政府が大型減税など経済対策を発表 財政悪化の懸念も
イギリスの経済対策は日本円換算ですと約25兆円程度です。
トラス前首相は半年間で約9兆5000億円をインフレ抑制策として拠出すると表明しておりました。
上記の減税策も含めて、経済対策が発表された際に、ポンド安、イギリス国債の価格下落、イギリス株の価格下落が発生しました。
これを受けて、イギリスの中央銀行であるイングランド銀行は重要な決定をしました。
2022年9月28日に、国債の無制限購入を宣言したのです。
変動相場制を採用し、自国通貨発行権を保有する中央政府に財政的予算制約は存在しません。
それは我が国日本同様、イギリスにも当てはまります。
中央銀行が市場の混乱を鎮圧した
英イングランド銀行(中央銀行)は28日、債券市場で英国債の利回りが急激に上昇(債券価格は下落)したことを受け、国債を緊急で買い入れると発表した。
引用元:英中央銀行、国債を無制限購入 市場安定へ臨時措置
残存期間20年超の国債を対象に10月14日まで、市場の安定に必要な分だけ金額無制限で実施する。
10月上旬に予定していた保有国債の市場での売却開始は同月末に延期する。
このおかげで、市場の混乱は収束しました。
ポンド安とイギリス国債の価格下落は経済対策発表前の水準にほぼ戻りました。
中央銀行はキーボードタッチするだけでお金を創造できます。
したがって、市場の混乱を沈静化できるパワーを発揮できる力を保有しているのです。
経済政策の策定が楽になります。
付加価値税の廃止または税率引き下げが盛り込まれるべきだった
インフレの何が問題なのか理解する必要があります。
一般庶民、購買力が弱い人々が物やサービスにアクセスできないことが問題なのです。
高インフレ経済下においては、実質的な価格を引き下げる政策こそ求められています。
したがって、付加価値税の税率引き下げもしくは廃止に踏み込むべきでした。
イギリスの付加価値税は軽減税率や対象外品目などが日本よりも充実しています。
しかしながら、標準税率が20%であり、物やサービスの価格を底上げしております。
トラス前首相は付加価値税の廃止を主張し、光熱費高騰への対策として各家庭への直接給付を行うべきでした。
スナク新首相は危ういと思う
今後のスナク政権での経済政策について、森永は「彼は財政を思いっきり締めると言われている。みんな生活が物価高で疲弊しているなかで財政を締めたら、生活がどんどん苦しくなると思う」とスナク政権の経済政策に問題があると指摘した。
引用元:イギリス新首相・スナク氏の経済政策に森永卓郎が私見「来年は世界恐慌になる」
トラス氏が首相を辞任した後、リシ・スナク氏が保守党の党首として無投票当選され、イギリスの首相となりました。
経済政策においては、緊縮財政に踏み出す可能性が高いようです。
イギリス国民はさらなる所得低下で苦しむことになりそうです。
また、スナク首相はインド系のイギリス国民なので、一般的なイギリス国民から情熱的に歓迎されるとは思えません。
なぜかつての植民地の人間がイギリスの国家権力の頂点に立つのかと、内心毛嫌いしているイギリス国民が多いのではないかと危惧しています。
人種差別は駄目ですし、それはイギリス国民にもご賛同いただけると思います。
また、法的な問題やスキャンダルをスナク首相が抱えているわけではないようです。
しかしながら、イギリス社会の根底に流れる有色人種に対する差別意識が噴出してしまう可能性は捨てきれません。
率直に申し上げて、このまま総選挙に突入したら、保守党は大敗するのではないでしょうか。
以上です。
詳細な分析を有難うござゐます。財務省は例へば松本圭介などがインフレの国とデフレの国では条件が違ふのに、英国を引き合ひに出して「減税」や「国債発行」を否定してをりますから、全く油断がなりません。彼らは国民の富を奪ふ「ウジ虫」です。
ところで英国は、保守党から労働党に代はつて「大きな政府」を目指した方が良いかも知れません、外交、防衛政策では大差のない国ですから。
TO:雷蔵ファン様
コメントをいただき、誠にありがとうございます。
※返信が遅れましたこと、お詫び申し上げます。
>>ところで英国は、保守党から労働党に代はつて「大きな政府」を目指した方が良いかも知れません、外交、防衛政策では大差のない国ですから。
上記の件は、おっしゃる通りかと。
ウクライナ情勢への対応方針、対中牽制のために我が国日本と「準同盟」関係といえるほどの緊密ぶり、おそらく大差ないかと。
労働党でも問題はないと思います。
スナク首相が総選挙で負けそうな空気もあり(私だけが勝手に感じているだけかもしれませんけど)
今後もイギリスから目が離せませんね。
以上、今後ともよろしくお願いいたします。