「五公五民」でいいの?

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平成から令和へと元号が変わった際には、新たな時代の幕開けになるという期待感も多少はありましたが、蓋を開けてみれば、景気は相変わらずの長期不況に沈んだままで国民所得は右肩下がり、大卒初任給も90年代半ばからほぼ横ばい。

反対に、消費税率は3度も上がり、社会保険料負担も年々重くなる一方で、家計や個人が自由に使えるお金は減るばかり。

実収入から非消費支出(税や社保負担)を除いた可処分所得は当然少なくなり、昨年の可処分所得の平均額は20年以上も昔の2000年よりも減っています。

こうした家計の貧困化はこれまで聖域とされてきた教育費用にも影響を及ぼし、大学生の奨学金受給割合も96年ころは20%くらいだったのが、最近は50%近くにまで増え、大学を卒業する若者は30年も昔からほとんど増えない初任給を元手に、一人当たり平均320万円もの借金を背負ったまま社会人生活をスタートすることになります。

「最近の若者は車を買わない、時計を欲しがらない、酒もたばこも嗜まない」と白眼視するオッサンもいますが、社会人デビューと同時に車1台分の借金を抱えているのに、車だの時計だのと買えるわけがありません。

彼らにはカネがないことくらい解らないのでしょうか?

すでに皆様が実感しているとおり、ここ30年もの間続いた長期不況の所為で確実に家計が貧困化しているのです。

現実から目を背けたがる輩は、「戦後の焼け野原と比べれば今の不況なんて大したことはない」、「アフリカの最貧国の子供の境遇を考えれば、日本の若者は恵まれている」と屁理屈を並べて愚図りますが、私たちが暮らすのは“現代の日本”であり、遠い過去や海の向こうの国々を持ち出されても空いた腹は満たされません。

「戦後の焼け野原だって?米兵におねだりすればチョコやガムをもらえたんだから、そんなの応仁の乱とか天明の大飢饉に苦しんだ昔の人々と比べれば大したことないでしょ?」

「アフリカの子供だって?そんなおユニセフの連中が手を差し伸べているだけマシだろ?ヨーロッパ人に虐殺された中南米諸国とか、毛沢東やスターリン、ポル・ポトらに虐殺された中国やソ連、カンボジアの国民だっているんだぞ!」

と混ぜ返されたら、いったいどう反論するんでしょうか?

『「国民負担率」の上昇が止まらない予想 2023年消費税引き上げの下地も整う』

(荻原博子/経済ジャーナリスト)

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「みなさんは、「五公五民」という言葉をご存じですか。江戸時代、農民は収穫したお米の半分つまり5割を年貢として上納し、残りの5割で暮らしていました。これを、「五公五民」と言います。ただし、江戸時代でも初期は農民の手元に6割のお米が残る「四公六民」だったのですが、8代の徳川吉宗が行った享保の改革で、「五公五民」になりました。

吉宗は、ドラマ「あばれん坊将軍」では、悪人を叩き斬る正義の味方で、実際に強権を持って大鉈を振るい、様々な改革をしました。ただ、それまでの「四公六民」から「五公五民」にして負担が重くなったことで、農民の一揆なども増えたと言われています。

実は、今の日本は、この「四公六民」から「五公五民」に変わる境目にあります。

財務省が、毎年公表している国民負担率は、10年前は39.8%で「四公六民」でしたが、2020年度は46.1%し四捨悟入すれば「五公五民」。21年度は44.3%と少し戻しましたが、この先、社会保険料や税金のアップがあることを考えると、「五公五民」になりつつあるといっても過言ではないでしょう。(略)

給料や年金が減る一方で、税金や社会保険料の負担は年々上がっていきます。

今年10月には、雇用保険の保険料が引き上げられ、働く人の負担分は0.3%から0.6%と2倍になります。介護保険も、10月から後期高齢者の窓口負担が1割から2割に引き上げられます。さらに10月からはパートでも100人超の会社に勤めている年間106万円以上の人は、会社に社会保険料を支払わなくてはならなくなり、サラリーマンの妻で今まで社会保険料を払っていなかった人は、収入から保険料を引かれるようになります。加えて12月には、昨年の税制改正大綱で「見直しの検討を進める」とされた110万円まで無税で贈与できる暦年贈与の廃止が具体的に進められていく可能性があります。2023年には、健康保険や介護保険料も上がりそうで、その先にも、たばこ増税や皆さんが飲む第三のビール、発泡酒の増税が待っています。(略)」

荻原氏が徳川吉宗の政策の負の部分をきちんと指摘しているのは好感が持てます。

教科書で「享保の改革を断行した幕府中興の祖」と持ち上げられ、時代劇「暴れん坊将軍」で正義の味方として描かれたせいか、吉宗は過大評価されがちです。

ですが、上記記事のとおり、吉宗は享保の大飢饉が起きた最中に庶民に重税を課し、百姓一揆や打ちこわしが頻発したという“庶民いじめの史実”には、吉宗びいきの連中はダンマリを決め込みます。

自分たちが散々持ち上げた正義のヒーローが幕府御金蔵の収支ばかり執心し、飢饉後の食糧不足や価格高騰に苦しむ民衆に苛政を課したなんて史実は、彼らにとって都合が悪すぎるものなんでしょう。

実際に享保の改革が実を結んだのは、大岡忠相の献策を容れ、かの荻原重秀が端を開いた元禄の貨幣改鋳を参考に実施した元文の改鋳という積極財政策を行い、その結果、庶民の所得が向上し経済が活性化したことによるもので、改革の最終盤にきてようやく結果を出すことができたと評価すべきでしょう。

まぁ、江戸三大改革がお好きな頭の弱い方々って、だいたいが「激しい身分差別と圧政で庶民を苦しめた江戸幕府を倒した維新のヒーローや明治政府、最高!」といった明治史観を妄信しているくせに、吉宗や松平定信、水野忠邦、新井白石らを“幕府中興の祖”とか“幕府復権の立役者”と持ち上げたがるんですが、目の敵にしていたはずの江戸幕府の強権化に手を貸した為政者を褒めるって、本当に節操がないというか、端から矛盾していませんかね?

さて、先日、財務省が2021年度の国民負担率が48%に上ると公表しました。

これは前年の46.1%から1.9%ポイントも上昇しており、過去に例がないほど急激に上がっています。

ちなみに、2019年度→2020年度も44.4%→46.1%と1.7%ポイントと大きな上げ幅になっており、ここ2-3年で国民の負担は目に見えて重くなっています。

まさに「五公五民」の世界で、例話の世に生きる私たちは、明治政府が蔑んでいた江戸幕府為政下の農民よりも厳しい重税を課されているのです。

これほど国民をナメた話もありませんよね。

実際に、昇給や昇格により給与支給額が増えたのに、増額分を所得税や住民税、社保料に持っていかれ、手取り額を見るとほとんど増えていない、むしろ、管理職になって残業代をつけられなくなり、手取り収入がグンと減ったなんて笑えない話はそこいら中に転がっているでしょう。

こんな世の中が続けば、「見返りがないんだったら、ガツガツ仕事したって意味ないよな」、「こんな給料じゃ、どうせ結婚なんてできないし、自分一人が好きに暮らせる程度の収入さえあればよい」、「頑張って管理職になっても、手取りは増えないし残業代もつかない。それどころか上下の調整で板挟みになりストレスを抱えるだけ」、「このままのんべんだらりとテキトーに仕事して、週末に趣味に没頭するのがコスパ最強だろ!」という風潮が蔓延し、生産性は下がる一方でしょうね。

日本はよく“鉱物資源に恵まれない島国”だと揶揄されますが、そんな日本が世界一流の経済大国にのし上がった原動力は、人材育成や技術開発、研究投資といった国富(生産力・供給力)増強に対して弛まぬ努力を続けたことと、積極財政を源泉とする莫大な需要力でそれを支え続け、「需要と供給」という経済の両輪をうまく高速回転させ続けてきたことによるものです。

平成・令和の長期不況の病巣は、需要を軽視し蔑視する増税緊縮主義や構造改悪主義が蔓延った所為で実体経済への資金供与料が減り、需要サイドの回転数が落ち、それにつられて供給サイドの駆動力が低迷したことにあります。

惨状と呼ぶにも等しい平成・令和長期不況を打破するためには、あまりにも過重な国民負担率を劇的に下げねばなりません。

かつての高度成長期の負担率は25%前後、バブル景気の時は37%前後でした。

重過ぎる負担が家計の消費力を奪い、供給サイドへの養分供給量が欠乏し、付加価値や生産性の低下をもたらしているのは明白です。

まずは、消費税廃止、所得税や住民税、固定資産税、燃料関係に掛かる税の軽減、社保料の全額国庫負担化により国民の実質所得を増やし、同時に、公共投資額の大幅増額や継続型給付金の実行により名目所得を増やさねばなりません。

政府が国民の所得を名実ともに年率20-30%くらい増やす気概を見せ、実行に移さないと、日本の消費力や需要力は早晩墜落し、国内消費に見放された供給サイドも崩壊を余儀なくされるでしょう。

私たちに残された時間はあまり長くはありません。

「公共事業はムダや不正の温床」

「消費税廃止なんてムリ。どうせ将来倍額の負担になるだけ」

「給付金はクレクレ乞食にエサを与え、ネオリベを悦ばすだけ」

「BIをやっても生産力は増えないからハイパーインフレになる」

などグズグズ寝言や戯言を吐く暇なんて、もうないのです。

過去の常識に囚われ発想の転換を躊躇したり、醜い私怨を滾らせて有用な積極財政策に嫌悪感を示すなんて以ての外の愚行でしょう。

「国民所得の顕著なる増加による需要力の拡大」こそ、我が国が打つべき一手なのです。

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