増税緊縮主義で経済成長できるという「フリーランチや魔法の杖」は存在しない

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矢野財務事務次官が文芸春秋への寄稿で、与野党の経済政策を”バラマキ合戦のようだ”と強く批判した、いわゆる「矢野発言」は大きな反響を呼びました。

岸田首相の所信表明演説から”改革”の二文字が消えたばかりか、(実際にやる気があるのかどうかは別として…)自民党の選挙公約に、

・分配政策を強化し、分厚い中間層を再構築

・財政の単年度主義の弊害の是正

・科学技術の振興、インフラ整備や経済安全保障などへの長期的・計画的な取り組み

・大胆な「危機管理投資」で安全で強靱な国家の創生

・事業継承の際に個人保証を引き継がない「個人保証ゼロ」に向けた施策を実行

・看護師、介護職員、幼稚園教諭、保育士をはじめ、賃金の原資が公的に決まる方々の所得向上に向け、公的価格のあり方の抜本的な見直し

・北大西洋条約機構諸国の国防予算の対国内総生産(GDP)比目標(2%以上)も念頭に、防衛関係費の増額を目指す

等々、積極財政に基づく”分配重視”政策がずらりと並んだだけに止まらず、それに触発された野党からも、消費税の廃止や減税、給付金の拡充といったバラマキ政策が沸き起こりました。

矢野次官ら増税緊縮派の連中は、こうした分配重視を旗印に掲げた積極財政の勃興に対して、30年もの間日本経済を冷え込ませてきた増税緊縮教という既得権益を脅かす”蟻の一穴”と警戒したのか、慌て気味に公表したのが、冒頭の矢野論文(論文の名に値しない幼稚で杜撰な内容ですが…)というわけです。

私は、高級官僚として位人臣を極めた矢野次官が、高校生の読書感想文レベルの駄文をバタバタと月刊誌に寄稿した動きを見て、増税緊縮派の連中は、積極財政論が巻き起こす地殻変動に対して、こちらが思っている以上に強い警戒感と焦燥感を抱いているのだと逆に驚かされました。

いつもなら、政府要人が財政出動を口にしたところで歯牙にもかけずに鼻先でせせら嗤ってガン無視を決め込むか、子飼いのマスゴミや似非エコノミストらを使って「日本は財政危機だ~、ムダ遣いは次世代へのツケ回しだ~、ハイパーインフレになるぞ~」と牽制球を投げ込む程度の対応で済ませていたものですが、今回はよほど狼狽したのか、現職の事務次官自らが先陣を切って低レベルな反論文を寄稿し“お気持ち表明”するという痴態を晒しています。

おそらく、自民党公約に「単年度予算主義の廃止」や「長期的な投資計画」、「公的価格の引き上げ」、「防衛予算倍増」といった刺激的なワードが並んだことに相当強いショックを受けたのだろうと推察しますが、自民党がもっと踏み込んで、消費税減税&廃止や社保負担軽減、BI導入のうち一つでも公約に盛り込んでいたら、矢野次官は発狂し憤死していたかもしれませんね。

矢野次官の発言に対しては、鈴木財務相や坂上忍(三流タレント)、桜田謙悟(経済同友会代表幹事)、小幡績(経済学者)、橋下徹(職業不詳)、山下一仁(エコノミスト)ら増税緊縮脳の連中が必死になって擁護しています。

ですが、彼らの論理展開は極めて杜撰なばかりか、積極財政批判に使う言葉も、「借金大国」、「子供世代へのツケ回し」、「バラマキ」、「ハイパーインフレ」、「フリーランチはない」、「魔法の杖や打ち出の小槌もない」etcと、すでに何度も論破され、効力も戦闘力も失ったポンコツミサイルばかりです。

最近も、キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の山下一仁氏が、論座に寄稿したコラムで矢野発言を全力擁護していました。

『矢野財務次官は間違ったことを言ったのか?〜公務員はロボットではない』

https://webronza.asahi.com/business/articles/2021101400001.html

「(略) 困っている人を救済するのは、政治の役割だ。本当に困っている人になら、10万円どころか100万円だって払ってよい。(略)

「ただのランチ」というものはない。財政赤字(国債による借金)によって過大に消費しているのが現状だ。もちろん、国債が将来のGDPにつながるような社会資本形成に貢献するもの(建設国債)であれば、否定すべきではない。しかし、今の国債の多くは単なる赤字国債である。

 この借金を解消するには、二つしか方法がない。将来世代が生産するGDPのかなりを自分たちで消費しないで、我々の借金を払ってくれることだ。もう一つは、激しいインフレ、金利の上昇が起きて、国債の価格が暴落し、国の借金がチャラになることだ。このとき負担するのは、現在国債を保有している人たち(多くは金融機関)だ。(略)」

出ましたね!「フリーランチはない」の決めゼリフ‼

増税緊縮脳のバカは、「フリーランチや魔法の杖、打ち出の小槌」という言葉さえ出せば、積極財政論の立場を貶め、国民を瞬時に黙らすことができると高を括っているようですが、もう、そんな安っぽい啖呵は通用しません。

なぜなら、彼らの推進した増税緊縮策の成果は惨憺たる大失敗に終わったことは、誰もが知るところとなり、白日の下に晒されているからです。

①国民の平均給与は20数年前より7%以上も下落(1997年/467万円→2020年/433万円)

②2000年→2019年のGDP成長率(年平均)がたったの0.24%(しかも計算方法改竄による下駄履きあり)

③2000年→2020年にかけて国民負担率は35.6%→46.1%に爆増

④1999年→2017年にかけて非正規雇用の割合は24.9%→37.3%に爆増

⑤1999年→2016年にかけて企業数は485万者→359万者へ激減

ちょっと例示しただけでも、これだけ日本の国力を毀損させ、国民の生活を破壊してきた”罪人”が使うまやかしワードの効力は、とうの昔に雲散霧消してしまったのです。

彼らが国民に課した”聖域なき増税や永久増殖を続ける社保負担、飽くことなき緊縮政策”は、日本国民にいったい何をもたらしたのか?

答えは「国民の貧困化と国力の衰退だけ」でした。

つまり、増税緊縮派のバカどもが喧伝してきた、「増税・緊縮・構造改革」という所得抑制策や需要弱体化政策を主軸とする経済成長論や骨太の方針といかがわしいポンコツ論こそが、”あり得ないフリーランチ”だったのです。

彼らには、

「緊縮政策をかまして、売上や収入として市中に出回るカネを減らしておいて経済が成長するわけないでしょ?バラマキを止め、財布の紐を締めておいて国民が豊かになるなんて、そんな都合のよい”魔法の杖”は存在しないよ」

「消費税や社会保障費負担を国民や企業に押し付けておいて、いったい誰がお金を使えるの?実体経済のプレイヤーに重荷を背負わして経済が活性化するわけないでしょ?ひょっとして、増税や社保負担増が経済を成長させる”打ち出の小槌”だと思ってるの?」

と説教したいですね。

さて、本稿の最期に一点申し添えておきたいことがあります。

それは、矢野発言を報じるネットニュースのコメ欄にあった財務省の増税緊縮主義への批判コメントに関するものです。

ネットニュースのコメ欄では、矢野発言やこれまでの財務省の緊縮政策に反発する意見が圧倒的に多いのですが、中には財務省設置法の条文を盾にとり、「確かに財務省の緊縮思想は問題だが、財務省設置法で財政健全化を義務付けられている以上、公務員たる彼らがそれに従って行動するのは止むを得ない。法改正しない政治家の責任だ」と擁護気味の発言をするコメントを散見します。

ですが、私はこうした意見に首肯する気は微塵もありません。

与野党問わず、いまだに緊縮脳な政治家が大半を占める情勢下ゆえ、政治サイドが財政法や財務省設置法の改正に極めて消極的なのは事実ですし、私自身も、財務省は解体して歳入管理庁、あるいは内閣府内の国債管理局に格下げすべきと考えています。

ですが、既存の財務省設置法の条文でも、政治的もしくは超法規的な解釈次第で、財務省内に蔓延する増税・緊縮絶対主義を否定することは可能です。

問題となるのは、財務省設置法第3条(任務)の「財務省は、健全な財政の確保、適正かつ公平な課税の実現、税関業務の適正な運営、国庫の適正な管理、通貨に対する信頼の維持及び外国為替の安定の確保並びに造幣事業及び印刷事業の健全な運営を図ることを任務とする。」という条文です。

財務省を批判しつつも、法を盾に彼らの所業を擁護する者は、”健全な財政の確保”、”国庫の適正な管理”、”通貨に対する信頼の維持及び外国為替の安定の確保”といった辺りの文言を見て、「こりゃ、財務省が守銭奴になるのもしゃーないな。よっしゃ、政治家批判に切り替えるでっ!(猛虎弁)」となりがちですが、法律や省令の条文に書かれた言葉や文言を素直に読みすぎるのは、財務官僚に丸め込まれるだけです。

例えば、「健全な財政の確保=PB黒字化、税収の範囲内での歳出」ではありません。

”財政”とは「国家や地方自治体が収入・支出をする経済行為」という意味ですから、”健全な財政”とは「国力の増進や国民生活の安寧を確保する歳出計画を適正に実施すること及びそれらに必要な歳入の確保」であるとも解釈できます。

財政という言葉は、歳出(出)と歳入(入)の両輪で構成されており、”健全な”という修飾語は出と入両方に掛かっているはずです。

しかし、増税緊縮脳な連中は、健全なという言葉を入の方だけに掛け、入の規模に合わせて出を抑制することこそ正義だと喧伝し、日本経済を堕落させる大失態を犯し続けてきたのです。

”健全な財政”という文言は、「国力の強靭化とそれが生み出す果実を国民へ分配する正の経済循環を実現するための適正な歳出計画を立て、それに必要な歳入を税に頼らず国債発行や貨幣製造で確保する」という意味に都合よく解釈すればよいのです。

同じように、”国庫の適正な管理”は「国債発行や貨幣製造で調達した歳入の執行実績の適正な管理」と、”通貨に対する信頼の維持及び外国為替の安定の確保”は「積極財政策に基づく内需喚起と、国内需要の隆盛による供給力の強靭化や高度化により、国内の需給バランスを高度な水準で均衡させ、通貨や為替の安定化を図る」と解釈すればよいでしょう。

「健全な」という言葉を指して、「抑制する」とか「箍を嵌める」という方向に解釈するのは間違いであり、「先進国の地位に相応しい水準の経済成長や国民生活の向上を実現し、それらを以って供給力の強靭化に邁進する国家基盤を構築する」と解釈すべきなのです。

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