最近リフレ派の声が小さくなったと思いませんか?
今春の日銀人事で退任する桜井真審議委員の後任に専修大の野口旭教授が入り、若田部副総裁をはじめメンバー9人のうち4人をリフレ派が占めるなど、彼らは我が国の金融政策の枢要をがっちりと握っています。
ですが、その割に経済誌や新聞、ネットを見ても、リフレ派や彼らの意見を指示する論調はほぼ皆無であり、かつて隆盛を誇った量的金融緩和政策の凋落ぶりが窺えます。
長引く不況に消費増税とコロナ禍が重なり、インバウンドを含む外需への期待も萎む中で、経済論壇の対立軸は「財政再建and規制緩和VS金融緩和」から、「財政再建VS積極財政」へとステージが変わりました。
元々、金融政策の効き目は好況時や、好況下の軽い風邪症状程度のプチ不況期にこそ最大の威力を発揮するものですから、令和・平成不況レベルの深刻な需要不足型不況下の効き目がいまいちなのも当然です。
リフレ派の面々は、それでも量的緩和政策の効果を実力以上に喧伝する努力を惜しみませんでしたが、黒田バズーカがすっかり過去の栄光と化し、日銀金融政策決定会合で量的緩和政策の継続を訴えるたびに冷笑され、もはや量的緩和政策がネタ化してしまったいま、変わり身の早い彼らは新たな道を模索し始めたようです。
『マスコミが報じない、未消化で終わりそうな「コロナ交付金」のゆくえ』(高橋洋一)
「(略) このコロナ禍でも、財務省は財政再建至上主義を頑なに目標としている。6月14日に開催された財務省政策評価懇談会では、矢野事務次官自らが、財務省の財政での評価は「C」だといい、コロナ禍の補正予算で財政再建ができなかったからだという( https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/policy_evaluation/proceedings/material/71seihyoukon.html)。
そもそもコロナ禍での目標設定が間違っているが、官僚では出来ないので、政治でこれを正すべきだった。
政府分科会が出す、恐怖を煽るような試算。その裏側では補正予算での医療供給体制予算措置の未消化が発生し、コロナ禍において財政再建至上主義と結合している。
さらに、他の先進国に比べるとそれほどでもないのに、マスコミは新規感染者のみを取り上げ続ける。一方で、医療体制強化の「緊急包括支援交付金」1.5兆円や時短要請協力金の「地方創生臨時交付金」4.5兆円の未消化には触れられていない。(略)
最後に、未消化が事実上起こらない財政支出を教えよう。それは、「個人への給付金や減税」である。「補助金などの財政支出は実務上出来なかった」というわけのわからない理由を官僚はいうが、給付金、減税ならその理屈は通らない。
いっそのこと、緊急事態宣言で国民に迷惑をかけるお詫びとして、一律給付金(または、社会保険料一定期間減免)というのはどうだろうか。」
かつてリフレ派の論客として量的緩和政策万能論を語り、「財政政策は、金融政策の武勇伝を華々しく着飾るための道具に過ぎない」とばかりに財政政策を嘲笑してきた高橋氏ですが、ここ1年あまりは金融政策の優位性を声高に叫ぶのを控え、積極財政策を擁護する論調に変わってきています。
彼が持論の過ちに気づき、積極財政論に擦り寄るのを敢えて非難する気はありません。
金融政策の効果や役割をしっかり把握したうえで、財政政策と手を取り合い、そのサポートに廻ろうとする気構えがあるのなら歓迎します。
彼は上記コラムで、コロナ関連予算の使い残しを防ぐ方策として、
- 減税
- 給付金
- 社会保障費減免
を提案していますが、私もこれに同意します。
「緊急事態宣言で国民に迷惑をかけるお詫びとして、一律給付金(または、社会保険料一定期間減免)というのはどうだろうか」という高橋氏のストレートな提言も、国民の心情にシンプルに響く発想で、良い方策だと思います。
あれこれと小難しい理屈をこねくり回すよりも、出口の見えぬ自粛を押し付けられ荒み切った国民感情を癒すための弔慰金として、減税や給付金、社保料減免などを実行し、減るに任せてきた国民所得を名実ともに引き上げてやれば、国民の納得感も高いでしょう。
ただ、その名目は” 緊急事態宣言で国民に迷惑をかけるお詫び”ではなく、令和・平成不況やコロナ禍期間中の政府の経済失政が招いた国民所得の減少や低迷に対する補償であるべきです。
そうでないと、麻生財務相のように、「全国的な緊急事態宣言発令でない限り、コロナ給付金は認めない」という意味不明な屁理屈が罷り通ってしまいますからね。
政府が緊急事態宣言発令を人質に取り、国民ニーズの高いコロナ給付金の可否を専横するなど、思い上がりも甚だしい暴挙です。
「減税・給付金・社会保障費減免」は国民の消費力をダイレクトに刺激する速効性も効果も非常に高い優れた政策ですから、躊躇なく実行に踏み切るべきでしょう。
「代替財源が~」、「財政再建が~」、「ネオリベが~」なんて愚図っているうちに、不況が取り返しのつかないレベルにまで深刻化してしまうリスクを忘れてはなりません。
「デフレ脱却給付金」でも「コロナ見舞金」でも何でもいいので、異次元の財政拡大をお願いしたいところですね。
私も高橋洋一氏は嫌いですし、「時計泥棒のくせにーーーー!」と書けば気持ちいいことは確かですが、そこは印象操作となるためどうにか自制して、何を言っているかで公平に評価したいと思います。
リフレ派の言説が表向きだけでも財出推しに変わってきたのは歓迎したいですね。
異次元の財政出動や聖域なきバラマキこそポストコロナの政策トレンドになるべきで、それに乗り遅れた国家は21世紀中に没落の憂き目を見るでしょう。
高橋洋一氏の財政観や貨幣観は、点数でいうと50点くらいなのですが、「社会保障免除(徴収の一定期間停止)」については昔から言及していたので、私は評価しています。
あとは配当所得が分離課税となっていることで、年収1億円をピークに高所得者ほど所得税負担が下がるという欠陥も是正しなくてはなりません(画像参照)。同じグラフを見て分かることですが、社会保険料に上限あることも「歪み」の原因と言えるでしょう。
グラフには載せておりませんが、住民税なんかもフラット(平坦)な税目のため、所得税のような累進性を導入してはどうかなど、論点は尽きません。いま話題のDaiGo(メンタリスト)の差別発言(?)をきっかけにして、国民には「応能負担」についても深く考えてほしいと思います。
自己レス。画像サイズが大きすぎたため、前回のコメントに添付されておりませんでした。
Daigoの一件には呆れ果てますね。
彼の言説は自民党や維新支持者にありがちな「高額納税者=社会的貢献度の高い人物」という小学生並みの社会感に立脚する愚論ですが、この手の幼稚な暴論を咀嚼もせずに飲み込むバカが多いのもまた事実です。
人間に与えられた一日の時間は24時間しかないのですから、その間にできる努力はせいぜい他人の2-3倍しかないはずですが、世の中には他人の数十倍から数百倍もの所得を懐に入れる輩が存在しています。
彼らが自身の努力の分量を遥かに上回る法外な所得を手に入れることができるのは、他者の努力が生み出した果実や付加価値を分不相応に独占しているからこその結果なのですが、思い上がった連中は、そうした現実から目を背け、自分一人の努力や才能で勝ち得たものだと吹聴しています。
その最たる例が、馬鹿ガキレベルの優生思想を開陳して大炎上したDaigoなんでしょうね。
>他者の努力が生み出した果実や付加価値を分不相応に独占しているからこその結果
「あなたたちが今、分不相応な所得や他者からの羨望を得ているのは、日本国という共同体みんなで作り上げたインフラの恩恵を得ているだけで、たまたまなんやで? 今の環境で得ている評価も、絶対的なものではないんやで?」と言ってやりたい輩が自民党や維新の支持者、ビジネス的な成功者に多いです(画像参照)。
そして、「Daigo批判してるけど、あの下劣な思想を具現化した政党こそ、あんたらが大好きな自民党なんやで?」とも言ってやりたいです。「有能な俺はもっと沢山の所得や承認を得なければおかしい」みないな勘違いが入った万能感は、20代前半くらいで卒業すべきであり、「まだそのレベルか? 早く自分の傲慢さに気づけよ!」っていつも思います。
>> 「有能な俺はもっと沢山の所得や承認を得なければおかしい」みないな勘違いが入った万能感は、20代前半くらいで卒業すべきであり、「まだそのレベルか? 早く自分の傲慢さに気づけよ!」っていつも思います。
本当にそう思います。
入社5-6年目の若造みたいなフワついた万能感で社会や政治を語るのは恥ずかしい限りですね。