東京オリンピックの連日の日本人アスリートの活躍に国内は大いに熱狂している。この熱狂が国民の健全なナショナリズムからくるものであればよいのだが、今の日本国民が正常な国家観、共同体意識を有しているのかどうか私は疑問を感じる。オリンピックでの自国民のメダル獲得など同じ国民の喜びを共に喜び合うのと同じくらいに、災害による被災など同じ国民の悲しみ、苦しみに共感し、それを救うために行動することにエネルギーを注げるというのが国民国家の繁栄に不可欠な国家観、共同体意識だと思うが、今の日本国民には同じ国民の苦しみや悲しみへの共感が欠如しているように思う。
復興五輪に熱狂する反対側で多くの被災者が取り残されている現状に無関心な日本人
7月13日放送のNHKクローズアップ現代プラスでは各地で発生した豪雨災害や地震で未だに壊れた住宅に住み続けることを余儀なくされるなど再建から取り残される被災者が多くいるということが取り上げられていたが、日本人選手の金メダル獲得に歓喜している国民のうちのはたして何人が同じ国民である被災者の苦しみに共感し、助けるために声を上げているのだろうか。
被災者を救うために一番必要な積極財政への言及を避け財務省に忖度する国家観と貨幣観なきNHKの制作者
番組の中ではこの問題の打開策として「災害ケースマネジメント」というものが紹介されていた。これはボランティア団体などが被災者のもとに出向き、抱える事情や悩みを聞き取り、専門家と連携して一人一人にふさわしい支援計画を作るというようなものらしい。この取り組み自体は悪くないと思うが、ボランティアが手弁当でやるのでは被災者全員を救うのは難しいし、どんなに良い支援計画を作っても肝心の被災者への公費支援が少なければ絵にかいた餅にしかならない。しかし、番組の中では積極財政の必要性への明確な言及はなく、おまけに「災害国の日本において、どこまでなら被災者の個人財産を救済することができるのかということは、きちんと議論しておかないと」と、被災者支援の専門家かどうか知らないが、時代遅れの間違った貨幣観に基づいた関西学院大学の斉藤容子准教授の発言を放送していた。斉藤氏はただの勉強不足で悪気はないのかも知れないが、「被災者支援の財源は税金であり限りがあるので全員は救えない」というように国民をミスリードし本来可能な支援をできなくしてしまいかねない。
被災者支援にもっと金を出しても全く問題ないことは特別定額給付金国民全員10万円給付で証明されたのに同じ国民のために声を上げない国民が大多数では東京オリンピックが盛り上がっても未来に希望はもてない
NHKは問題提起は適切でも、制作者に共同体意識は無いから勉強不足の斉藤氏を利用して、財務省に忖度して被災者を犠牲にするようなことを平気でできるのだろう。それを視聴している国民にしても、昨年の国民一人当たり10万円の特別定額給付金給付で財政破綻も金利高騰もインフレも起こらなかったという事実から、自国通貨を持つ政府はインフレ率の許す限り国債発行(貨幣発行)で被災者支援の財源はいくらでも出せるということは容易に理解できるはずであり、健全な共同体意識があれば、NHKに抗議は殺到し、政府に対しては被災者全員に一律1000万円給付、全壊、半壊など被害程度に関係なく再建費用の9割以上を公費負担くらいの被災者支援拡充を要求する声が被災者以外の国民からもあがっても不思議ではないと思うが、それはほとんどない。
災害大国の日本国で同じ国民を見捨てるという共同体意識の欠如した言動を続ければ必ずしっぺ返しを受けるということに気づかない国民が大多数を占めているようでは、オリンピックがどんなに盛り上がっても私は未来に希望なんかもてない。