経済問題を語る際に、脳内がいまだに産業革命前とか高度成長期以前で止まったままの人っていますよね。
その最たるものが「常に供給サイドから経済を語る連中」です。
彼らの発想は、“イノベーションには必ず買い手が付き、それ自体が需要を創造する”、つまり、「良いモノを作りさえすれば必ず売れる」という、いわば国家の生産能力が前近代的な家内手工業レベルにとどまっている経済社会を起点としています。
日ごろは、AIだのDXだのIoTだのと騒いでいるくせに、そうした最先端テクノロジーの存在をコロッと忘れ、あたかも技術革の遅滞が不況脱却の最大障壁になっていると言い立てます。
ですが、現代社会において、そうした最先端技術を不可欠とする産業分野はごく一部に限られますし、AIやDXに日本全体のGDPを牽引するパワーなどありません。
狂信的なサプライサイダーって、自分では最先端を行ってると思い上がっていますが、現代社会の技術・生産・流通・ITなどの強大なパワーや能力を知らぬ時代遅れの田舎者に過ぎません。
彼らは、「イノベーションやニュービジネスというサプライサイドさえ打ち出せば、需要は自然と湧き出てくる」と信じ込んでるようですが、そんなものは、オカメインコみたいなオルチャンメイクをして白馬の王子様から待ちぼうけを喰らう勘ちがいブスみたいなものでしょう。
来世紀を先取りするイノベーションでさえ、買い手がいなければただのゴミ。
それが経済社会の厳しい掟です。
“無”から“有”を生み出すことができません。
カネを撒かずに所得は生まれず、所得なくして需要はなく、需要なくして供給は成り立ちません。
経済に打ち出の小槌は存在しないのです。
『日本経済、低迷の元凶は日本人の意地悪さか 大阪大学などの研究で判明』(加谷珪一)
「(略)日本は他の先進諸国と同様に、十分な内需が存在しているはずだが、どういうわけか日本の国内消費は低迷が続いており、これが低成長の元凶となっている。
一部からは消費増税が原因であるとの指摘も出ているが、税は経済学的に見て成長を根本的に阻害する要因ではなく、しかも欧州各国が15~20%という高い消費税率であるにもかかわらず順調に成長している現実を考えると、この理屈は当てはまらない。
日本だけが消費を拡大できない理由は、長年、謎とされてきたが、近年、経済学と脳科学を組み合わせた学問の発展によって、ヒントになりそうな研究成果が得られている。簡単に言ってしまうと、日本人は諸外国と比較して「意地悪」な人が多く、他人の足を引っ張る傾向が強いというものである。(略)
日本では何か新しい技術やビジネスが誕生するたびに声高な批判が寄せられ、スムーズに事業を展開できないことが多い。その間に他国が一気にノウハウを蓄積し、結局は他国にお金を払ってその技術やサービスを利用する結果となる。
成功者は基本的に妬まれるので、自身の経験を積極的には他人に語らず、成功のロールモデルも共有しにくいが、これでは消費経済が活発化するわけがない。(略)」
加谷氏の主張をまとめると、
①日本の低成長の原因は消費増税ではなく、成功者を妬んでその足を引っ張り、出る杭を打とうとする国民性の所為だ
②その結果、イノベーションが生まれず、技術を他国に横取りされ、消費が盛り上がらない
といったところでしょう。
まぁ、陳腐なサプライサイダーがよく持ち出す愚論でしかありません。
『積極財政』という需要創出の蛇口を止めたまま、
「経済不調の原因は需要サイドではなく供給サイドにある」
「供給サイドが機能しないのは、イノベーターの成功を妬む卑しい国民の所為だ」
と責任転嫁するわけです。
多くの国民は、この手の大バカ論にまんまと30年以上も騙され、
「日本の生産性が低いのは日本型雇用に巣食う老害の所為だ」
「いや、産業構造がサービス業に偏っている所為だ」
「いやいや、国会議員や公務員の給料が高すぎる所為だ」
「いやいやいや、若者が海外に行こうとしない所為だ」
と、まったく的外れで生産性のない議論を延々と続けてきましたが、はっきり言って、貴重な歳月と時間をドブに捨てただけの愚行でしたね。
日本が低成長から抜け出せないのは、
・不況の真因が需要不足にあるという事実を認めようとしなかったこと
・そのために積極財政策による実体経済への資金供与という真の対策がなされず、国内の供給力が極度に疲弊したこと
・供給力の疲弊が国内人材の育成や教育の足枷となり、更なる供給力の瓦解を招いたこと
に尽きます。
サプライサイダーの連中は、サプライサイドに何のエネルギー補給もせぬまま、黙ってサプライサイドの成長に期待するだけのバカ親みたいなものです。
自分たちは水や肥料を撒こうともせず、硬いアスファルトをぶち破ってニョキニョキ生えてくるド根性大根の出現をまだかまだかと待つ無責任な連中の意見など聞く価値はありません。
加谷氏はコラムの中で、
「日本だけが消費を拡大できない理由は、長年、謎とされてきた」
とすっとぼけてますが、そんなものは「家計所得が増えていないからだろ?」の一言で終了です。
阪大に研究委託せずとも、経済学や脳科学まで持ち出さずとも、いまどき小学生でもこれくらい知ってますよ・・・。
嘘だと思うなら、近所の小学校に行って生徒さんに尋ねてみてください。
近所のスーパーで買い物中のオバちゃんに聞いても同じ答えだと思いますよ。
また、彼は、
「日本人は諸外国と比較して「意地悪」な人が多く、他人の足を引っ張る傾向が強い」
「日本では何か新しい技術やビジネスが誕生するたびに声高な批判が寄せられ、スムーズに事業を展開できない」
なんて言ってますが、他人に足を引っ張られたくらいで止まるビジネスやイノベーションって、いったい何なんですかね?
そんな軟な根性でビジネスをやっているからダメなんですよ。
アメリカの企業訴訟の現状を見てください。
・売上高800億円以上の企業が抱える平均訴訟件数は147件
・1件当たりの訴訟費用は平均1.7億円
・上位500社の訴訟関連支払い費用は22兆円
だそうですよ。
コレって、意地悪な人による他人の足引っ張りや批判のレベルと遥かに超えてますよね。
単なる妬みや批判と、多額の賠償を要求される訴訟と、どっちが出る杭を強くぶったたく行為なんでしょうね?
日本みたいに“足引っ張りや批判”で済めば御の字ですよ。
それから、
「一部からは消費増税が(低成長の)原因であるとの指摘も出ているが、税は経済学的に見て成長を根本的に阻害する要因ではなく、しかも欧州各国が15~20%という高い消費税率であるにもかかわらず順調に成長している」
なんて言ってますが、実質賃金が1997年比で+10~30%も伸びている欧米諸国と、逆に▲10%超も減り続けてきた我が国とを比較するのは根本的に間違っています。
【参照先】
https://www.zenroren.gr.jp/jp/housei/data/2018/180221_02.pdf嘘だと思うなら、試しに消費税を廃止して見れば解ることです。
加谷氏は、消費増税は低成長の現況や原因ではないと主張しているくらいですから、消費税そのものは経済成長とリンクしない、つまり、消費税は経済成長に対してニュートラルだ(=影響はない)と言ってるわけですから、消費税を残す必然性はありませんよね?
「日本経済低迷の元凶は所得不足による消費力の減退の所為」
「現況を正すためには、積極財政策による消費税廃止+社保負担ゼロ+BI導入という需要大創出政策が不可欠」
これで話は終了です。
おっしゃるとおりです。国の借金が増えると言って財政支出を抑え続けてきたつけが出ているのでしょう。そして、いまだにプライマリーバランス黒字化などと唱えてる政治家を何とかせねば。
政治家の経済オンチぶりには本当に腹が立ちますね。
普段は家庭のことなど一切顧みようとしない政治家連中が、こと経済の話になると家計簿脳に汚染されるのが不思議で仕方ありません。
子のタイミングでPB黒字化を議論すること自体、脳みそがスポンジ化しているとしか思えません。