いきなり自分とそっくりの人形を見せられたら複雑な思いをすることだろう。(無職転生)
日本はここ20年で韓国が無視できない存在になってしまったような気がする。それは、産業的な意味で、日本が担ってきた部分を奪い取っている企業が韓国に本拠地を置く企業であったりする事が多かったり、芸能文化関係での輸出攻勢で、自国に投資をしなくなった日本へ入り込む余地がより大きくなったということもあるだろう。もともと、中華世界の世界観で、韓国そのものが日本よりは中華の中心に近いという思いがあって、日本対韓国の国際的な立場の差が縮まってきた状況で、韓国側が日本側にとっては理不尽なことを強く押し出すようになってきた、ということもあったのだろう。そんな時代の背景もあるなかで、インターネットによる大衆のコミュニケーション手段が、Web掲示板やSNSなどとして提供されてきた。そこで、日本の中では、韓国の身勝手な態度に対して敏感になる層が生まれてきたのである。ネットの中の右翼ということから、ネトウヨなどと蔑称されている。そういう層が生まれたときには、100年ぐらい昔の歴史をさかのぼって、どういうことが韓国で行われてきたか、そのときに日本がどう手こずったのかという話を、明らかにして、やっぱり、韓国は同しようもないという思いを深めて、相手を貶める事によって、日本が相対的に良い国だと思う気持ちを高めていたのである。
その事自体は事実を確認した上での感想なので、間違っている話ではない。しかし、日本自体の問題にフォーカスできていたのか、といえば、残念ながら否というべきものだろう。経済的な観点で言えば、IMFのお世話になった韓国は、IMFの開発途上国に指導するお決まりのやり方を矯正され、資本的に外国の支配に置かれるという状況がもたらされてしまった。それによって、経済の大部分を担う財閥そのものが外資の支配下に置かれた上で、まだ未発達だった国内消費力を見限り、輸出産業に大きく依存することになった格差社会が韓国の方でより激しく進んでいったという事情がある。財閥企業の社員になれなければ、貧困になるし、財閥企業の社員でも、競争が激しくて定年40歳と言われているぐらいの熾烈な争いが繰り広げられている。そこにはいられなかった多くの国民は貧困にあえぐ事になる。劣悪な社会環境の中でも、財閥企業に就職するための学歴社会の側面もあり、それは、教育に金をかけられる家族だけが勝ち組の権利を得られるということにつながっていくだろう。多くの国民はその時点で負けを認めざるを得なくなり、子供を残す気力さえ失っていくこと言うことだ。
このような状況に対して、日本はマシだ、まだ中小企業が世界一の規模存在するからすごい、ということは、事実としてそうであるのは間違いない。だから、日本はいい国だという考え方も、半分はあたっているだろう。しかし、それは現在において、という、前提付きの話にすぎない。
別に韓国を貶めるなということでもない。貶めなければそれで良いという話ではない。
問題は、自分たちがどういう状態で、未来に向かって現在どうしていくべきなのか、ということを直視する事が大事であろう。そういう目でこの問題、韓国の出生率の話をみれば、他国を蔑む前に自分たちの国がそれを後追いしていることに恐怖を感じてこないだろうか。他国の心配を他国に話だけにするのはあまりにも、危機感がない。他国の間違った政策を、自国が後追いしていないかという観点で見直してみれば、日本の現在は相当危機的な状況であることに気がつくはずだ。他国の所業は、自国の鏡として、自国のこれからの態度をどうするべきかということの材料としてみることが、危機感が不足している我々には必要なことだろう。