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反逆する武士
uematu tubasaです。
初回投稿日時:2020年10月29日(令和2年10月29日)
財政政策こそが主役である
HSBCホールディングスのシニア経済アドバイザー、スティーブン・キング氏は現在頼れる選択肢は財政政策だと指摘。
引用元:パンデミックで経済政策の主役交代、金融政策から財政政策に
「その観点から中央銀行側は政治的なプロセスにおいて力が若干失われたことを受け入れざるを得ない」と指摘した。
上記のブルームバーグの記事の中で、HSBCホールディングスのシニア経済アドバイザーのスティーブン・キングは現在頼れる選択肢は財政政策だと指摘しており、経済政策の主役は財政政策になっているとのこと。
世界の中央政府は、リーマンショックへの対応においても、財政出動して対処しており、その後、緊縮財政に舵を切るのがあまりにも早いため、経済成長が鈍化してしまったという見方がエコノミストの間に広がっているようです。
低成長とデフレというリーマンショックの二の舞を演じることになりはしないかと戦々恐々としているようです。
したがって、経済政策の主役は財政政策になったとのこと。
そもそも、経済を一つの舞台とするならば、民間企業が主役であり、中央政府が脇役であり、中央銀行を含めた金融が黒子役です。
金融政策が主役だったという時代が狂っていたとしか思えません。
なぜ黒子に主役を任せるのでしょうか。
民間企業が金融危機や感染症によって打撃を受け、元気がないのであれば、脇役である政府に大活躍していただく方がよろしいのではないかと。
経済観があまりにも現実と乖離していたということに気づいて欲しかったというのが正直なところでございます。
自然環境改善型財政政策という選択肢を否定はしない
財政政策となると、どういったことにお金を使い、どのような政策目的を達成する方向に舵を切るべきなのかという議論が出ます。
その中で「グリーン・ニューディール」という単語がリーマンショック後の財政政策で語られることになり、環境に配慮した財政政策、自然エネルギーを活用するための財政政策という文脈で語られることが多いです。
私個人としては「グリーン・ニューディール」という外来語ではなく、自然環境改善型財政政策という単語を使用してほしいです。
例えば、ホームレスを雇って、道頓堀を大掃除するとか、海洋プラスチックを除去する技術に投資するとか、石炭火力発電所の隣に野菜工場を建設して、二酸化炭素を野菜の光合成に利用するという取り組みを期待したいです。
そういった意味では私個人としては「グリーン・ニューディール」に反対はしません。
環境があまりにも悪いので、それを改善するためにお金を投資するという発想は必要でしょう。
財政政策とは政府の見える手を使ってお金を動かすことである
本日の記事では基本的なことを申し上げたいと思うのですが、そもそも財政政策とは政府の見える手でお金を動かすことです。
例えば、日本政府が土建会社に対して、老朽化した橋を修繕せよと命じて、修繕が完了したらお金を支払うことになっていたとします。
その場合、お金が銀行などの金融機関を通じて生まれることになり、そこから従業員の給料や設備投資のためのお金ということでお金がどんどん第三者に渡されることになり、お金が動いていきます。
デフレ不況のように、お金を使うよりもお金を貯める方がお得な経済状況が継続する、または、感染症の拡大で物やサービスの需要が激減してしまう場合、何らかのきっかけがないとお金は動きにくいのです。
能動的かつ巨額のお金を使うことができる経済主体とは、総選挙によって選ばれた国会議員によって監督され、中央銀行を事実上子会社化している中央政府だけなのです。
誰かがいきなり財布の紐が緩んで、一気にお金を使うようにならないかなと夢想してはなりませんし、お金が動かない世の中が常態であると達観してはならず、誰かの支出は誰かの所得という原理原則を理解しなければなりません。
裁量的財政政策と非裁量的財政政策の違いとは何か
さらに議論を深めたいと思います。
財政政策には、裁量的財政政策と非裁量的財政政策がございます。
裁量的財政政策とは、公共事業のように議会で予算案を新たに作成した上で政府支出を増減する、もしくは暫定的に税率を変更することで行われる財政政策のことです。
非裁量的財政政策とは、所得税や失業保険などのように景気変動の自動安定化機能を持つ制度によって行われる財政政策のことです。
例えば、景気が過熱したら所得税の税収が増え、景気が落ち込んだら所得税の税収が少なくなり、失業保険給付が増えるなど予めプログラムされています。
ここで厄介なのは、財政出動や財政政策に比較的肯定的な方でも、上記の2つのどちらを優先させるかという点で、意見が割れてしまうのです。
ここでは誰がどちらの財政政策を支持しているのかという点にはあえて踏み込みません。
※単純に面倒だからです(笑)
私個人の意見としては、どちらも重視すると言いますか、デフレ経済下であるならば、インフレ制約に激突しないのであれば、どちらの財政政策もやってほしいというのが正直なところなのです。
まずは法人税やキャピタルゲイン税を累進税化するのであれば、非裁量的財政政策の強化となりますし、生活保護や失業保険給付を手厚くするのであれば、非裁量的財政政策になります。
また、国家安全保障上の危機が発生したということなのであれば、防衛費の増額という裁量的財政政策も必要で、インフラが老朽化しているのであれば、公共投資という裁量的財政政策が必要です。
たが、非裁量的財政政策は機動的ではありますが、想定外に対処しにくいという弱点がございますし、裁量的財政政策は予算案の策定や実行に時間が必要ですが、柔軟に対応できるという強みがございます。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う需要の蒸発という急激な経済情勢の変化に対処できるのは、非裁量的財政政策というよりも裁量的財政政策であると言い切れるでしょう。
念のために申し上げますが、私は非裁量的財政政策を否定しておりませんし、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済情勢の変化に非裁量的財政政策は無力だったと主張したいわけではないのです。
ただ、持続化給付金や特別定額給付金などの支給を日本政府が決定したことで、助かった方も多いのではないでしょうか。
※もちろん金額が少ないという批判は当然あり得ますけども。
結局、裁量的財政政策だろうが非裁量的財政政策だろうが、過度なインフレにならない限り、どんどん実行せよという話であり、裁量的財政政策だから駄目とか、非裁量的財政政策だから駄目という話はナンセンスということです。
本記事は反逆する武士の10月23日の記事の転載です。
以上です。