人間追い込まれるとものすごい力を出す、とも言われるが、溺れる者は藁をもつかむともいう。安倍政権7年間で学んだことは、どんなに一つの属性が役に立ちそうだと思っても、本質がくるっていればダメだということである。政治などという多岐にわたる事項に対する判断が要求されるものに対しては、本質的な考えの方向性というものを無視することは致命傷になる。
安倍晋三首相による日本破壊は、世界的なコロナ災禍の的確な対応が急がれるこの期に及んでも発揮されている。あらゆる神経を使って、丁寧に実施しなければ、脆弱になっている日本経済の構造を、大きく痛めつけることになり、1~2年後にコロナ対策が落ち着いた後の、日本経済復興のための構造がその時かそれから遠くない未来において構成できていない恐れがある。
現在の政府の対応を見れば、明るい日本が想像できる状態ではない。コロナがいつ収束するかわからない状況で、経済の衰退を反転するどころでもない状況で、自粛を強要され、国民は不安に駆られている。今は、給付を中心とする腎族な対策で、生活や雇用を保障する必要がある。そして、コロナ対策を意識しながら、感染を広げない形で経済活動を再開していくことになるだろう。
こんな中、大阪でのパフォーマンスにほだされたせいなのか、橋下徹総理期待論というのがくすぶっているらしい。どうも、田原総一朗や一部の保守派なども含めて、何かやってくれそうというぐらいの勢いのみでそれを推しているように見える。彼の指導で進められた大阪都構想も、勢いで突破することだけが目的であり、都構想なるものが実現して、大阪が復興するということについては、維新がだした都合の良いデータ以外は、限りなく少ないという分析しかない。
損な判断力の亡くなった国民は、今一度、橋下徹がどういう人間なのか、ということを振り返っておくことが有効だろう。安倍政権を支持してきた場合には、特に、その振り返りと同時に行えば、自分が期待してきたこと(希望的観測というべきか)と現実の差を、バイアスをできるだけ取り除いて認識することができるだろう。
Yahoo!ニュース なぜか湧き上がる「橋下徹総理待望論」。そこで彼の過去発言を振り返ってみた(HARBOR BUSINESS Online)
いくつか抜粋しておこう。
女房の妊娠中にコスプレ不倫を繰り返し、それがばれると「娘に制服を着ろと言えなくなった」(2012年7月19日 msn産経west Internet Archive)と発言。
「今回が大阪の問題を解決する最後のチャンスです。二度目の住民投票の予定はありません」(大阪維新の会の公式HP Internet Archive)と言いながら、否決後3ヶ月もしないうちに、再び「都構想」をやると言い出した。
「ウソをつかない奴は人間じゃねえよ」(『まっとう勝負!』小学館)
橋下は破れた革ジャンを仕入れて高値で売り、友人が批判すると「気付かずに買うのはお人よしや」と答えたという。また、「広がる橋下ネットワーク」という自己紹介パンフレットには、実在しない公認会計士や税理士らの名前がずらりと並べられていた。橋下同期の弁護士たちが「こんなもの配ったら懲戒請求されるぞ」と警告すると、橋下は「だって、本名書いたらバレますやん」と答えたという。(『毎日新聞』2012年4月15日)
橋下は繰り返し政界復帰を否定しているが、2007年には大阪府知事選への出馬の準備を進めながら「(立候補は)2万パーセントあり得ない」と言っていた人物だ。
気になったら元記事を読んでみるとよい。彼の真意は別にある・・・とかそういう読みができるのであれば、いつまでも、だまされ続ける才能があるだろう。別に、橋下本人はこれらの発言を隠しているわけではない。わざわざ自著として出版したりもしているぐらいに自信たっぷりに言っているのであるから、そこから受け取れるそのままのイメージを堪能するのが正しい感覚だろう。そこに変に期待すると痛い目を見る。とくに、政策が実行できてしまうところに彼をおいてしまうと、少なくとも国民との信頼関係で政治を行う気などほとんどないことがわかるだろう。
こういう人間に、首相を期待するということはどういうことを意味するか。
考えてほしいのは、今は、日本が置かれている状況である。コロナ災禍との戦いを切り抜ける必要があるとともに、それを抜け出すだけではどうにもならない状況にあるということをである。経済も社会の強靭性をもたらす中間共同体が破壊されてしまって、大企業、外資が搾取することを容易にされてしまっている状況で、絶賛衰退しているのだ。
それを何とかしなければ我々の明るい未来は存在しえない。それを実施するため、衰退を反転させる必要があるが、そのためには、多岐にわたる破壊状況を修復していくために、政府と国民が一丸となって取り組まなければならないのだ。そのためには、今回のコロナ対策でのごたごたでもわかるように、国民と政府の信頼関係が重要なポイントとなるのだ。
それを踏まえたうえで、橋下総理期待論、とはいったい何なのかを考えた方がよいだろう。
このように、タイミングと丁寧な対応が求められ狭い了見で、勢いのみで納得させるような「突破力」で対応できるものでもない。中長期的な対応においても、中韓がコロナ災禍から日本より早期に脱出できる可能性が高く、日本の何も考えないグローバリズム政策においては、企業や市場が荒らされていくことにもなりうる。要するに、国の未来を守るための、適切な保護政策を実行していくという政治力が必要なのである。それは、雑な個人的な欲望からくる動機のみの単なる突破力では実現できないのだ。