あとがき(原作担当 遠藤万次郎)
この作品は一応、第66話を最終回に設定しておりますが、貨幣、財政、税制といったマクロな経済に関するエピソードは、恐らく第61回の今回で最後となりそうです。MMT(現代貨幣理論)的なポリティクスが政策として実行され、実績を上げ続けている世界であれば、それは旧来型の国会議員にも多少の影響は与えるだろうということで、作中ではそんな影響を受けた野党党首の状況も描かれています。このまま行けば、次回は「国民投票」を描くことになるのですが、動画資料などが存在しないため、どういった構成や演出にしようか、今から悩みの種です。まあ、地方自治における住民投票を参考にするのがいいかもしれません。
ところで「白い巨塔」という、山崎豊子の社会派小説を原作にした名作ドラマがあります。私が視聴しているのは唐沢寿明が主演のシリーズなので、今回はそちらの話をいたします。あれは前半が教授選挙、後半が医療裁判をテーマに構成されているのですが、前半の教授選挙で「決選投票」の場面があるのはご存知でしょうか? 私の記憶違いでなければ、確か投票の1回目で誰も過半数に届かず、投票で1位だった候補者と2位だった候補者を残して再度、期日を改めて投票し直す流れが描かれています。あのくだりは、撫子たちが作中で導入を決めた投票方式「即時決戦投票(単記移譲式投票、優先順位記述投票)」を説明するのに、非常に便利だなぁと思いました(投票制度の内容は第55話、第56話をご参照ください)。これから候補者調整を念頭においた政界再編に絡み、「最良の選挙制度」を外で語る上で、例題として使うのにもの凄く便利と感じています。
ドラマシリーズ後半の「法廷バトル」の方も圧巻の内容でしたね。私も各種裁判には原告と被告、他人の裁判の傍聴と、それなりの経験はあるのですが、そんな私から見ても、裁判の準備から各種尋問の仕方に至るまで、リアル過ぎて文句をつけるところがありません。現在放送されている日本のドラマの大半が、学芸会の延長のような過剰で薄ら寒い演技を廃し、あのような精緻に描かれた重厚な脚本であったなら、もう少し国内外の評価は違ってくるでしょう。それはともかく、自分たちの国の行く末を決める大事な選挙、死票を出さないためのより良い制度があることについて、この「白い巨塔」の教授選挙を使って説明し、広められたらいいなと思っています。
さて、次回の配信日ですが、6週間後となる9月27日(日)を予定しています。それではまた、次回のあとがきでお会いしましょう。