西日本豪雨から今年で2年となったが、未だ広島、岡山、愛媛の被災3県で1900世帯が仮住まいを続けており、愛媛の柑橘園地など農地の復旧は24%しか完了していないなど復旧・復興は必ずしも順調とはいえない現状である。そんななか熊本県をはじめ九州各地が梅雨前線停滞による記録的豪雨に襲われ甚大な被害が出ている。
被災地の迅速な復旧・復興とこのような悲惨な災害を繰り返さないよう日本全国の防災・減災を進めていくためには、我が国の新型コロナ第1波の際の教訓を正しくいかす必要がある。
- 緊縮派の提言を絶対に容認するな
- 日本政府の財政赤字は全く問題ないとコロナ第1波で実証された
- コロナ第1波が浮き彫りにした緊縮財政の有害性
- 令和2年7月豪雨の熊本老人ホーム14人死亡も緊縮財政が原因の疑いが濃厚
- 今後必要なのは積極財政なのは高卒でもわかるが、国の中枢では緊縮派が主流派
- 我慢や遠慮を美徳とするのは非常時には間違いというコロナ第1波の教訓
- 国民が声を上げることで実現できた10万円給付や持続化給付金
- 2年前に積極財政要求の世論がもっと大きければ西日本豪雨の復興はもっと早く進み、令和2年7月豪雨の被害も小さくできたはず
- 財源の制約は無いので国民が声を上げさえすれば全ての被災者を救うことも将来の災害を防ぐことも同時にできる
緊縮派の提言を絶対に容認するな
「コロナ対応で増加した財政赤字を解消するためにコロナ後は緊縮策が必要だ」という学者などがいるが、これは教訓を全く正しく理解してない見解であり、日本国民は絶対に容認してはならない。
日本政府の財政赤字は全く問題ないとコロナ第1波で実証された
新型コロナ第1波への対応で日本政府は第1次、第2次の補正予算を含め今年度一般会計で歳出が160兆円にもなり、新規国債発行額は90兆円を上回る見込みとなっているが、それでもデフォルトはおろか、インフレ率や国債金利の急激な上昇さえ発生していない。自国通貨建てで国債発行可能な国はインフレ率が許容範囲であれば政府支出拡大をしても全く問題なく、緊縮策は不要ということが実証されたのだ。
コロナ第1波が浮き彫りにした緊縮財政の有害性
そのような不要な緊縮策を長期にわたって行っていると、いざ支出拡大が必要になった時に支出拡大しても十分な効果が得られないということもコロナ第1波の教訓である。政府は医療や検査体制強化のために補正予算などの支出をしたが、医療機関でのマスクなどの感染防止資材の不足は長期にわたって続き、コロナに感染しPCR検査を受けられないまま重症化して亡くなった方も出てしまった。また、高齢者施設などでのクラスターも多発した。これは、医療や介護などの分野で政府が長期間緊縮財政をしていたので緊急時に対応できなかったということだ。感染症などの非常事態に備え政府は平時から十分な投資を続ける必要があるのである。
令和2年7月豪雨の熊本老人ホーム14人死亡も緊縮財政が原因の疑いが濃厚
今回の豪雨災害で熊本県の球磨川沿いにあった特別養護老人ホーム「千寿園」が浸水して14人が亡くなったがこれも、施設にエレベーターは無く、費用を抑えるために洪水リスクの高い立地となったことや人員不足も考えられ、緊縮財政が被害の原因となった疑いが濃厚だ。
今後必要なのは積極財政なのは高卒でもわかるが、国の中枢では緊縮派が主流派
以上のように今後必要なのは積極財政であることは、高卒の私のような者でも常識で考えればわかることだ。しかし残念なことに、コロナ後の緊縮財政を提言している経済学者の小林慶一郎氏をはじめ、我が国の政策決定に関与するところでは緊縮派が主流派となっている。
我慢や遠慮を美徳とするのは非常時には間違いというコロナ第1波の教訓
ただ、諦めるのはまだ早い。困っているのに我慢してなかなか助けを求めないという日本人の国民性は非常時には悪い結果をまねく。一人一人が遠慮せずに必要な支援を政府に要求することが非常時には他の人々のためにもなるというのもコロナ第1波から得られた教訓の一つだと思う。
国民が声を上げることで実現できた10万円給付や持続化給付金
第1波の感染拡大が始まり、経済面でも影響が出始めた当初に政府が示した支援策の規模は極めて小規模で経済被害から国民を救うのには不十分なものだったが、国民の不満の声が高まったことで、全ての国民への10万円一律給付、中小零細事業者への持続化給付金や家賃補助など支援策が強化された。これでもまだ十分とはいえず、個人への給付金の増額・継続、中小零細事業者への100%の粗利補償、消費税ゼロなど更なる財政出動が必要だとは思うが、当初と比べればかなりマシになっている。極度の緊縮路線の政府にこれ程の政策転換をさせられるほど世論の力は大きいのである。
2年前に積極財政要求の世論がもっと大きければ西日本豪雨の復興はもっと早く進み、令和2年7月豪雨の被害も小さくできたはず
2年前の西日本豪雨は間違いなく緊縮財政で防災・減災が疎かになったことによる人災の面が大きいが、マスコミの取材などで政府への失政に怒る被災者の方は少なかったように見受けられた。コロナ対策で90兆円超の財政赤字を拡大しても全く問題無かったのだから、2年前に復旧・復興や次の災害に備えた対策などの大規模財政出動を求める世論がもっと大きくなっていれば西日本豪雨の農地復興や住宅再建をもっと加速化したり、今回の「令和2年7月豪雨」の被害を減らすことができた可能性は高いと思う。
財源の制約は無いので国民が声を上げさえすれば全ての被災者を救うことも将来の災害を防ぐことも同時にできる
日本各地の甚大な被害を目の当たりにして、「自分たちはだいぶマシになったから他の所の支援を優先してほしい」などと、政府に財政的支援の強化を要求することを遠慮している方が今、西日本豪雨の被災者のなかに多くおられるのではないだろうか。しかし、それでは政府の緊縮路線が継続され令和2年7月豪雨の被災地も西日本豪雨の被災地も共倒れになるだけだ。
危機から全ての人を救うには、円建てのみで国債を発行している日本政府には財政破綻のリスクは無く、インフレ率の許容範囲なら財源の制約は無く、積極財政を求める世論さえ大きくなれば令和2年7月豪雨と西日本豪雨の被災地支援の拡充と全国の事前防災対策強化を同時に行うことは可能だということを全ての国民が理解する必要がある。