「賢者は現実を直視し、愚者は感情論に溺れる」

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私は仕事柄、たくさんの経営者とお会いします。

一口に経営者といっても、事業の規模や職歴・学歴、性格など千差万別で、その中から、ビジネスに共通する成功のヒントを挙げるのはとても難しいのですが、失敗しがちな人の特徴は即座に挙げることができます。(他人の粗探しは、それだけ簡単ということですが…)

①失敗や敗北という現実(事実)を受け入れようとしない(=現実から妄想世界へ逃避)

②失敗・敗北の原因を正しく分析しない(=他人の所為にする、自己正当化)

③必要な対策よりも感情論や好き嫌いが最優先(=目的より手段を優先)

これが敗者の特徴です。

彼らは、「俺は悪くない、俺のやり方は間違っていない。成功しないのは現実が間違っているからだ」という妄想に駆られ、資金や命が尽きるまで敗北のループを回り続けます。

こうした敗者の妄想を国家レベルで実践してきたのが、失われた20年以降、増税緊縮派が跋扈する我が国です。

・近代先進国では類を見ない長期不況という敗北や汚名から目を背け、

・失敗の原因を正しく分析せず、

・需要力の治癒という必要な対策を嫌悪し続け、

その結果、失われた20年が30年へ自動更新されようとしていますね。

なにせ、日本が誇るクオリティペーパー(冷笑)たる日経新聞のコラムに、こんなバカ記事が掲載されるありさまですから…

『ゾンビ国家からの脱却』(1/23 日経新聞「大機小機」/唯識)

ゾンビ国家からの脱却 - 日本経済新聞
このところの株価は好調だが、世界的な景気減速懸念を受けて積極財政論が盛んになっている。昨年来の現代貨幣理論(MMT)に加えて、米国のサマーズ教授らがかねて唱えている「長期停滞論」を背景に、自然利子率が低下して金融政策が有効性を失っている状況下では、財政政策に頼るべきだという主張も展開されている。しかしながら、これらの主...

「(略)昨年来の現代貨幣理論(MMT)に加えて、米国のサマーズ教授らがかねて唱えている「長期停滞論」を背景に、自然利子率が低下して金融政策が有効性を失っている状況下では、財政政策に頼るべきだという主張も展開されている。

しかしながら、これらの主張には、その場しのぎのバラマキ政策を助長して成長力をそいでしまうという大きな問題がある。

実際にそうなっているのが我が国といえよう。(略)

アニマルスピリットを最も萎えさせるのが、バラマキ政策だ。(略)

低金利下でゾンビ企業が生き残っている結果、日本の労働生産性は先進7カ国で最下位、米国の6割の水準に低迷している(日本生産性本部調べ)。(略)積極財政論の結果、バラマキ政策が行われて生産性の低い企業が生き残っている我が国の姿は「ゾンビ国家」というべきものだ。(略)

賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶという。よそ様のことはいざ知らず、実際に苦い経験をしている我が国としては、せめて愚者として自らの経験に学んで、まずはゾンビ国家から脱却する道を探るべきであろう。」

コラムを書いた唯識氏の主張を一言でいうと、

“バラマキがゾンビ企業を生き永らえさせ、そのために日本の生産性が低下し長期不況に陥った。日本が生き延びるためにはゾンビ企業を抹殺するしかない”

ということでしょう。

まさに、これまで幾度となく見た増税緊縮派の妄想テンプレートですね。

正直、“またこれか(*´Д`)”という感想しかありません。

情緒のイカれた馬鹿って、本当に同じことしか言えませんよね…

まず、日本でバラマキなんて行われていませんよ?

平成26年度予算(補正後)の国債費を除く歳出規模は約76兆円。

6年後の令和2年度予算では79兆円。

その増加率たるや、わずか4%にも満たず、年率換算ではたったの0.65%に過ぎません。

こんなケチくさい予算が“バラマキ”なんて言えますかね?

日経にコラムを書いて(たぶん)ギャラを貰っているくせに、唯識氏はデータを確認しているんでしょうか?

世界広しといえども、バラマキ(積極財政=民間経済主体へのビジネスチャンスの提供)が企業の成長力を殺いだ事例なんて、ほぼ見つからないと思いますよ。

商機の種があちこちに転がり、寝ていても生産性や付加価値が上がってしまい、設備投資や人材育成の長期計画が素人でも立てられる超お気楽な成長経済下で、敢えて成長力を弱体化できる企業を探す方が難しいでしょうから…

唯識氏のコラムにある“その場しのぎのバラマキ”って、いかにも、日本が放漫財政をしてきたかのような言い草ですが、そんな事実はありません。

緊縮脳に憑りつかれ、本筋の当初予算を削りまくったうえで、言い訳がましくつけた僅かばかりの補正予算こそ、“その場しのぎのバラマキ”であり、継続性のないお小遣い程度の補正予算で日本経済が成長軌道に乗るわけありませんよね。

ついでに、バラマキがアニマルスピリットを萎えさせたという唯識氏の大嘘も正しておきましょう。

我が国の開業率は、積極財政が機能していた、つまり、バラマキが行われていた1980年代には6~7%で推移していましたが、バブル崩壊や緊縮財政の嵐が吹きすさぶ1990年代後半以降は4~5%に落ち込んでいます。

緊縮財政が不況を呼び込み、起業環境を劣化させ開業率が落ち込む。

つまり、反バラマキ政策がアニマルスピリットを萎えさせたというわけです。

【参照先】

2 開廃業率の推移と現状

これは、民間設備投資の動きを見ても同じで、1990年代初頭に90兆円を超えていた投資額が2009年以降しばらく70兆円すら割り込んでいた事実を見れば、緊縮政策が企業のアニマルスピリット(挑戦意欲)を殺ぐ劇薬であることが即座に理解できます。

【参照先】

https://www.mof.go.jp/pri/research/conference/fy2016/inv_01_04.pdf

起業や投資はきれいごとではできません。

きれいとか、汚れたとか、薄っぺらな倫理観よりも、いかに多くのカネがスピーディーに動いているかが重要です。

アニマルスピリットを突き動かすのは、カネの美醜ではなく「多寡」なのです。

唯識氏は、低金利がゾンビ企業を生き永らえさせた所為で日本の生産性が低下したと主張しますが、それなら、いますぐ高金利政策を採るよう日銀や政府に訴え、経団連にも同意を迫るべきです。

経団連の中西会長に直談判し、市場金利を5-6%になるくらい引き上げるよう叱咤してはいかがですかね?

中西氏が代表を務める日立グループの有利子負債は1兆円超だそうですから、きっと渋い顔をされると思いますが、天下の日経にコラムを掲載する結構なご身分なんですから、“低金利は甘え! 低金利が日本の生産性を落としている!”という持論をぶつけるべきでしょう。

彼はゾンビ企業退治がお好きなようですが、我が国の事業者数は1999年の458万者から2016年には359万者へ22%も減っています。

このままのペースだと、約60年後には日本から企業が消滅してしまいます。

日本人は、もはや、ゾンビ企業云々と贅沢を言える身分ではないことを自覚すべきで、ゾンビ企業退治に熱を上げるバカは無視して、ゾンビ企業を生き返らせる対策が愁眉の急なのです。

唯識氏は、くだらぬ感情論をぶちまける前に、きちんと現実を直視し、データを確認すべきです。

自身の好き嫌い論を全国紙のコラムに書きなぐる行為こそ、究極の無駄づかいと言えましょう。

現実から目を背け、感情論全開で妄想に耽るのは最低の愚者の証しです。

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