お金の価値や裏付けは、お金を扱き使うことで生まれる

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経済誌やネットの経済論を読んでいると、「何の裏付けもない貨幣をバラまいても生産性は向上しないし、ハイパーインフレで経済の混乱を惹き起こすだけ」といったセリフを目にすることがあります。

たしかに、未開の土人しかいないアフリカの奥地や、パプアニューギニアやアマゾンの密林でいくらお金をバラまいても、iPhoneの最新機種は買えないし、ピザのデリバリーも届きませんから、バラマキ無意味論も正解だと言えるでしょう。

ですが、機能的財政論や積極財政論を唱える論者は、そんな荒唐無稽な経済環境を前提にしてモノを語っているわけじゃないことくらい、読者の皆様もお気づきですよね?

我々は、文明国や先進国が持つ高度な生産力や技術力、網の目のように張り巡らされた流通力を活かし、それらをさらに高度化させるには、絶対不可欠の養分となる需要や消費(売上・所得)を供給サイドに与え続けねばならない、と主張しているのです。

私が聖域なきバラマキを強く主張する真意は、

①所得逓増期待に基づく、国民の生活に対する自信・満足度・安心感を高めること

②国内産業に対して遍く広くビジネスチャンスを与え、産業構造・雇用機会・職種・技術分野の多様化を図ること

③長期的視点で技術力や人材育成に勤しめる経済環境を創出し、国富たる供給力を強靭化させること

にあります。

さて、増税緊縮派や構造改悪派の連中に限って、日本の生産性が低いと嘆くことが多いのですが、彼らは生産性向上の改革案として、決して貨幣供給の増量(=積極財政策)に触れることはありません。

そればかりか、「財政支出は甘え。ゾンビ企業を蔓延らせて生産性低下を招く」、「我が国の財政が破綻する」と財政政策を嫌悪します。

彼らは、政府が発行する貨幣や国債を極度に嫌い、“努力と根性と我慢で生産性を上げろ”としか言いません。

それが無理なら、「(安くこき使える)外国人労働者をどんどん入れて競争させろ!」と日本人を恐喝し始めるのが関の山です。

いつも不思議に思うのですが、彼らって、P/L(損益計算書)の最上位にある「売上高」をガン無視して、それを増やそうとせず、「売上原価」や「一般管理費」といったコストの削減しか言いません。

まさに、現場を知らぬソロバン係の蛸壺的発想ですね。

コスト削減ばかりに熱中し、肝心の売上を増やそうとしない企業に将来などあろうはずがないのですが、ことマクロ経済においても、貨幣(売上や所得に直結するお金)の量を増やすことなく、供給サイドの生産性をUPさせるなど絶対にあり得ませんし、1000%不可能です。

「生産性」の定義にもいろいろとありますが、労働力や資源から付加価値を産み出す際の効率の良否を指し、平たく言えば、“どれだけ収益性の高い生産やサービスの提供を行えたか”ということになります。

供給サイドがどれだけ努力や犠牲を払っても、肝心の市場に需要や消費の種が落ちていなければ、生産性が上がるはずないことくらい、小学生でも解りますよね。

土壌に養分がまったくない土地、降雨ゼロの過酷な土地で穀物を栽培するのと同じで、収穫や生産など望むべくもありません。

逆に、かつての高度成長期やバブル経済期のように、きちんと積極財政策が遂行され、利益率の高いビジネスチャンスがあちこちに転がっているような市場環境なら、生産性なんていくらで上がっていくでしょう。

なにせ、造れば造っただけモノが売れ、しかも、「高くてもいいから、良いモノを持ってきて」、「価格はいいから、早く持ってきて」と割の良い注文で溢れ返るのですから、モノを造り、サービスを提供する側にとって、これほどやりがいのある仕事はありませんよね。

この辺りの簡単な理屈が解らない似非論者に限って、「生産性の低い最大の理由は、人材の流動性の低さにある」とか、「人口減少に見舞われる日本は、移民を受け入れないと経済が持たない」という大バカ論を吐くものです。

ちなみに、韓国は、労働者に占める勤続年数1年未満の割合が31.5%と、我が国(8.0%)の4倍近くになり、非常に人材の流動性が高い国ですが、その労働生産性はOECD加盟国36か国中28位と振るわず日本(20か国)より下位に沈んでいます。

我が国の人材流動性の低さは、長期的人材育成と安定した雇用に裏打ちされた美徳や長所なんですから、ケツの軽い外人の悪習に倣う必要など微塵もありません。

また、総人口や労働人口の増減を経済問題に結びつけ、「胃袋経済論」や「供給による需要創造論」を唱えるバカ者も目立ちますが、需要の強さを決めるのは、人口そのものよりも、国民一人当たりの所得や消費力の大きさがモノを言いますから、人口が減ったなら、それを補って余りあるレベルにまで、一人当たりの所得を増やしてあげるのが最も効果的でしょう。

“人口が減るぞ→移民を入れろ”は絶対にダメです。

ここは日本人が暮らし、日本人の生活や文化、伝統を営々と引き継いで行くべき国なのですから、“人口が減るぞ→消費が落ち込まないよう一人当たりの所得をどんどん増やせ”という前向き且つ日本人にメリットがある対策でなければなりません。

日本の人口減少に危機感を抱くのなら、日本人が安心して生活でき、将来にわたって婚姻数や出産数が増えていくようなレベルの雇用や所得を創るのが先決です。

移民に頼りたがる増税緊縮派や構造改悪派の寄生虫どもは、日本人を増やすことや日本の生産性を上げることなんて望んでいません。

彼らの目的は、食い詰めた日本人を国外に放り出し、代わりに、奴隷労働も厭わぬ外国人労働者を輸入して、この国の社会基盤を根底から変貌させることです。

冒頭の話に戻りますが、貨幣の裏付けを強化なものにしたいのなら、貨幣の使用を惜しまず、実体経済にどんどん放り込んで扱き使うことです。

貨幣の出し惜しみは、需要不足のデフレ不況を生み、労働の対価や付加価値の低下を招き、長期的な生産力や人材を劣化させ、国富の既存につながります。

その先に待っているのは、生産力の破壊に伴う貨幣価値の暴落と激しいインフレですから、貨幣の使用に消極的な政策を打つことは、却って貨幣価値を棄損させ、その裏付けを失わせる愚行でしかありません。

貨幣の価値を維持向上したいのならば、貨幣を積極的に使い、それを養分とする供給サイドを刺激し続ける必要があります。

貨幣の裏付けは、「貨幣そのものの使用量・使用頻度・使用する経済主体の数」が多ければ多いほど、また、スピードが速ければ速いほど、より強固なものになるのです。

貨幣の裏付けなるものは、貨幣が生産活動を刺激することで強靭化する。

端的に言うと、貨幣そのものが生み出すと言っても過言ではありません。

まともな生産力を持つ文明国に暮らす国民なら、貨幣を使い倒すことこそ、生産活動の起点だと理解すべきです。

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