米中貿易戦争で身を削る日本。国内のトウモロコシが不足するという嘘

この記事は約8分で読めます。

大変お世話になっております。
反逆する武士

uematu tubasaです。
初回投稿日時:2019年8月29日(令和元年8月29日)

スポンサーリンク

日米貿易交渉にてトウモロコシ輸入決定

安倍首相は首脳会談で、米国産飼料用トウモロコシについて、日本の民間企業による250万トン規模の購入計画を説明した。
米中貿易摩擦の激化で、米国は穀物の対中輸出が厳しい状況。

日本企業が一部を買い入れて支援する形だ。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2019082600329&g=pol

日米貿易交渉において、安倍総理は米国産飼料用トウモロコシを250万トン輸入すると説明したようです。

※別のニュースサイトによると275万トンという報道もなされています。

米中貿易戦争において、中国がアメリカの農作物を購入しないため、余剰したトウモロコシをどうするのか困っていたようです。

これでトランプ大統領にとっては、中国に強気に出るための材料が増えました。
中国が農作物を購入しなくても、同盟国が購入してくれるということを明示したからです。

ここで注目するべきは、飼料用のトウモロコシであるという点、250万~275万トン規模という点です。

米国産トウモロコシを食べる家畜はいるのか

米国産のトウモロコシは9割以上が遺伝子組み換えのトウモロコシになります。
以下は農畜産業振興機構より一部引用させていただきます。

米国を含む世界で遺伝子組み換え作物(GMO)の商業的な生産が開始されたのは1996年とされており、GMOは直近約15年間で米国のトウモロコシ生産において一気に導入が進み、現在では同国のトウモロコシ作付面積の9割以上でGM品種のトウモロコシが生産されている。
トウモロコシにおいて遺伝子組み換えにより付与される特性は、大きく分けて害虫抵抗性(Bt)と除草剤耐性(Ht)の2つあり、近年では両方の特性を兼ね備えたスタック品種が大半を占めるようになっている

農畜産業振興機構:米国におけるトウモロコシ生産の現状

私の個人的意見なのですが、遺伝子組み換え食品はどう考えても完全に安全とは言えず、可能な限り我が国日本の市場からは駆逐するべきです。

にもかかわらず、安倍総理は輸入を決定してしまったようです。

さらに付言するならば、我が国日本が生産している飼料用トウモロコシの量は年間450~500万トン程ですが、その殆どを自家消費しているため、市場には流通せず、国内の統計自給率は0.0%とされています。

参考記事:グラフでみるとうもろこし

冷静に考えていただきたいのですが、国内で生産している飼料用トウモロコシの量の半分以上をアメリカから追加輸入することになります。

それだけの飼料用トウモロコシを食べるだけの家畜が国内に存在するのでしょうか。

それとも、米国産トウモロコシ以外の輸入を削減することになるのでしょうか。
トランプ大統領の機嫌は良くなりますが、その他のトウモロコシ輸出国の農家の所得は減ることになります。

官房長官は飼料用トウモロコシが足りないと言うけれど

菅義偉官房長官は27日の記者会見で、安倍晋三首相が日米首脳会談で表明した米産の飼料用トウモロコシの前倒し購入に関し、国内での害虫被害が理由だと説明した。
「ガの幼虫が食い荒らす被害が全国的に拡大し、供給が不足する可能性がある」と述べた。
トランプ米大統領には2020年11月の大統領選に向け成果を訴える狙いがある。
農林水産省によると、害虫のガ「ツマジロクサヨトウ」の幼虫が7月に国内で初めて見つかり、27日までに11県で被害が確認されている。
これを受け、同省は前倒し購入した際の保管料を全額補助する制度を設け、外国産トウモロコシの輸入を後押ししている。

引用元記事: トウモロコシ、害虫被害で不足 官房長官、米産購入を説明 

上記は日経新聞電子版より、一部引用させていただきました。
菅官房長官は記者会見にて、米国産のトウモロコシを輸入する件について、国内での害虫被害がその理由であると説明しました。

農林水産省は外国産トウモロコシの輸入を後押しするため、前倒し購入した際の保管料を全額補助する制度を設けたようです。

参考資料: http://www.maff.go.jp/j/chikusan/sinko/lin/l_siryo/attach/pdf/index-106.pdf

率直に申し上げれば、飼料用トウモロコシが足りないのが仮に事実だとするならば、我が国日本の食糧自給率の向上を目的とした国産の飼料用トウモロコシの増産を目指すべきです。

にもかかわらず、外国産トウモロコシの輸入を後押しするかのような制度まで存在しています。

外国の農家を保護するための政策をなぜ日本政府は実施するのでしょうか。
日本のトウモロコシ栽培に補助金を出して、畜産業の食糧自給率を底上げしてほしいと切に願います。

さらに付言しますと、菅官房長官は完全に嘘を吐きました。

害虫被害はフェイクニュースらしい

では、ツマジロクサヨトウの被害はどの程度なのか。
275万トンを輸入するということで、すでに供給不足になっているのかと思いきや、農水省に確認したところ「現状で営農活動に影響は出ていません」(植物防疫課)と話す。
発生が確認された地域では、大量発生を防ぐために防除や早期の刈り取りを促しているが、作物への影響はわずか。
「現時点で被害量はまとめていません」(同)という。

害虫被害はデマ? 農水省「現時点で影響ない」 米産トウモロコシ大量輸入で“忖度報道”

簡潔に説明すると、害虫被害により飼料用トウモロコシがすでに不足しているわけではなく、今後不足する見通しでもありません。

重ねて申し上げますが、日本は年間450万トンから500万トンほどの飼料用トウモロコシを生産しています。
その半分以上が害虫被害を受けるという破滅的なことは発生するのでしょうか。

ツマジロクサヨトウは寒さに弱い(10℃を下回る地域では越冬が難しい)らしいですし、飼料用トウモロコシの主要生産地である北海道ではツマジロクサヨトウの被害は確認されていません。

さらに言えば、米国産のトウモロコシは「デントコーン」と言われる飼料用トウモロコシであり、日本国内で害虫被害が出ているのは葉や茎を砕いて利用するトウモロコシ(サイレージコーン)です。

サイレージコーンは飼料作物としてのトウモロコシの種類です。
茎葉の収量が多く、子実はデンプン質が多く、切り刻んでサイレージすることで乳牛用の良質の飼料となります。
高い産乳量を求められる酪農現場では欠かせない飼料となっています。

https://www.tama5ya.jp/product/1082

家畜に対して牧草と同じような効能を持つサイレージコーンと、栄養を与えるためのデントコーンは別種類であり、代用は難しいと言えます。

以上のことから、害虫被害により飼料用トウモロコシが不足しているため、輸入を増やす必要があるという説明は「嘘」であり、控えめに言っても事実認識が完全に誤っていると言えます。

トウモロコシ購入のため補助金を投入するらしい

安倍首相は会談でトランプ氏に追加購入のため「民間企業を緊急支援する」と表明。
飼料メーカーや商社の購入を税金を基にした補助金で支える方針とみられる。購入を無理に増やすために多額の補助金投入を迫られる可能性がある。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201908/CK2019082702000138.html

民間企業が自主的に飼料用トウモロコシ(デントコーン)を購入する際に補助金を支給するという方針らしいです。

これもフェイクニュースである可能性がございますが、本当であればふざけたことです。

日本のトウモロコシ農家を支援し、自前で畜産のための飼料用トウモロコシを自給自足できるように最大限努力するべきです。

おそらく米国産のトウモロコシの輸入に対する予想以上の反発に怖れを抱いた日本政府は有権者を説得するためのシナリオを急遽用意したので、筋が通らないことになったようです。

人間は騙してはいけませんし、騙されてもいけません。
しっかりと日本政府の嘘を見抜き、正しい批判をしなければなりません。

飼料用ではなく、バイオエタノール用にすべし

対米貿易黒字を削減するため、やむを得ずトウモロコシを輸入するしか選択肢がないのであれば、飼料用として利用するのではなく、バイオエタノールにした方がまだ安全だと思います。

バイオエタノールとは、サトウキビやトウモロコシ、木材などのバイオマスを発酵させて製造するエタノールのことです。
バイオマスは、生物資源(バイオ)の量(マス)を意味し、上記のような植物の他、わらやもみ殻、家畜糞尿、下水汚泥、廃食用油など、動植物由来のエネルギー源として利用もしくは再利用できる有機系資源を指します。
バイオマスから生成される燃料がバイオ燃料で、バイオエタノールはこの一種です。

http://tenbou.nies.go.jp/science/description/detail.php?id=6

飼料用トウモロコシを食べさせる家畜が存在するのか否かを心配しなくてもいいですし、トウモロコシ輸入量や価格の調整をするという心配も無くなります。

米国産トウモロコシは飼料用ではなく、バイオエタノール用に転用するべきです。
石油燃料の削減も可能ですし、中東依存という地政学リスクの軽減にも役立つでしょう。

CO2削減にも効果がございますので、是非ともこれを絶好の機会として、バイオエタノールの普及に努めていただきたいと思います。

もちろん低価格で購入したのですよね?

最後になりますが、250万~275万トンの米国産トウモロコシを輸入するということはそれなりに低価格で購入したということでいいのでしょうか。

各社の報道を見ると、米国産トウモロコシの価格が明示されていませんでした。

あり得ないほどの低価格で買い叩いて、なおかつそれを飼料用ではなくエタノールに転用するというのであれば、今回の日米貿易交渉における農作物輸入分野についてはまだ許せるのですが・・・

まさか米国産トウモロコシを市場価格と同程度で購入したということはありませんせんよね?

日本政府に抗議しなければなりません。

総括:日本はアメリカの属国です。

この一連の流れを追うと、我が国日本がアメリカの属国であるということが如実にわかります。
私はいわゆる独立志向の日本人であり、対米自立派ですので、こういったことがあると本当に怒りが湧いてきます。

以上です。
すべてのコメントに返信できておらず、申し訳ありません。

ベーシックインカムに関しては、後日にはなりますが、詳細な記事をまた出します!

Subscribe
Notify of

4 Comments
Oldest
Newest Most Voted
Inline Feedbacks
View all comments
na
4 years ago

今回の政府の決定については、完全に反対の立場です。その上で申し上げますが、
現在もうすでに、日本はアメリカから飼料用トウモロコシを輸入しているのではないでしょうか?今回はその量を増やす、という事だと思います。
日本の家畜は、もうすでに遺伝子組み換えトウモロコシを食べていると思います。
私は、日本において遺伝子組み換えの野菜や穀物が蔓延するのは反対ですが、遺伝子組み換えそのものが危険だとはあまり思っていません。日本の畜産農家が真面目に生産した食肉や牛乳が危険だとは思わないのです(希望的観測ではありません。話すと長くなるので割愛します)
遺伝子組み換え(の危険性)云々を言わずとも、今回の政府の対応、安倍の数々の売国政策等、過度なグローバル化や新自由主義は批判出来ると思います。
「遺伝子組み換えは危険である」というプレゼンスに対して真っ向から否定するつもりはありませんし、それはそれで私も勉強していきたいと思うのですが、新自由主義批判として少しボヤけるんじゃないかと思いまして、コメントさせて頂きました。

名無し
4 years ago

反逆する武士様の記事を読ませて頂き大変勉強になる所が多いくバイオエタノールは自分初耳でした、ただコスト面が悪いのでなかなかやらないのでしょうね。政府の騙しのやり方は非常に良くないとは思いますが安倍政権的には国民の波を立てたく無いのと韓国やら北朝鮮やらの微妙な感じを受けてごますり?もしくは裏での密約でもしてくれてればと思う所もあります。アメリカ大統領に今の状態で言われればどなたでも受け入れてしまうのではと思います。

当ブログは2019年5月に移転しました。旧進撃の庶民
4
0
Would love your thoughts, please comment.x
()
x