あとがき(原作担当 遠藤万次郎)
作中に掲載のグラフ「日米中の各指標の増加率(2001年=1)」は、IMF「World Economic Outlook Database」の最新版より作成しております。グラフが2種類ある内、集計期間が2001年~2018年バージョン(下記参照)の方も、お察しの通り、「現実」の数値を改変することなくそのまま使用いたしました。
「統計予測の形を借りた最新データの使用」は、ある意味で禁じ手のような気がしないでもないですが、前回も弁明させていただいたように、作中の年代よりも先に進んだ「現実」の方が、各種指標が悪化してより説得力を持ってしまっているため、 読者に主張を伝えやすい側面があったりするのです。とはいえ、作中の2011年が現在の2019年よりまだマシであった状況を考えると、どうにかならなかったのかと、やはり悔しい気持ちにはなります。
そんな、年々国力が低下する絶望的な状況にある中で、京都大学レジリエンス実践ユニットの主導により、MMT(現代貨幣理論)の提唱者の一人として高名なステファニー・ケルトン教授が来日されるという嬉しいニュースがありました。外圧に期待せざるを得ない日本の言論状況は情けない限りですが、ケルトン教授の講演の様子やその主張については、新聞やテレビ等々でもそれなりに取り上げられましたし、日本人の貨幣や租税や財政に対する理解向上に大きく資することにはなりそうです。
私は嬉しさのあまり、来日されたケルトン教授に謝意を述べるべく、ツイッターへの投稿を行いました。その際、今回のエピソードに挿入したグラフを日本語表記のまま添付してみたのですが、ケルトン教授より「いいね」をいただけたのです。いや、日本語分からないだろうなと思いつつ、私も軽い気持ちでの画像添付だったのですが、グラフの中の「GDP」や「U.S.」のアルファベットを見て、何かを察してもらえたのかもしれません。
それでは、アメリカのMMT界隈でも興味を持たれるような、ちゃんと日本語から英語に表記を直した各種グラフを投稿したならば、ケルトン教授やそのフォロワーの方からどういったレスポンスが得られるのか、私は強い興味を持つようになりました。時間を見つけて、何か日本の事例を中心にグラフを投稿してみたいと思います。MMTの発祥こそアメリカではありますが、我々日本の経済ブログ界隈でも、同じような問題意識を持っていることに感心してもらえるのか、或いはこの程度のグラフならば、アメリカの言論空間では個人ブロガー間で普通に飛び交っているのか、気になるのは私だけではないはずです。
上記は懐かしい、ナタリア・ポクロンスカヤ検事総長の萌え絵ですが、同じく美人さんなケルトン教授にもこの展開の可能性を感じたというか、今回の記者会見での質疑応答の様子など、漫画にしてみると面白いかもしれません。MMTに関する重厚な解説漫画を何の確約(商業出版)もなく一から描き下ろせと言われると大変ですが、本場のMMT関係者らのツイッター向けに、例えば3ページずつの塊で週一で漫画やイラストを投稿するとか、セリフは全て英語で4コマ漫画にするなどすれば、市場は英語圏にも拡がるため、MMTを普及させる上でとてつもない可能性を秘めていると私は感じています。
【ショート漫画『MMTのケルトンさん(仮)』お話の具体例】
日本人記者A:政府債務が膨らむと、ハイパーインフレの懸念が……
日本人記者B:インフレ率が上昇した際、MMTではどのような抑制を……
ケルトン教授:20年以上、2%のインフレ目標すら達成できていない国での質問が、すべて過度のインフレをどう抑制するかという質問であることが、非常に興味深いと思いました
藤井教授:ガハハハハハハ
さて、次回の配信日ですが、4週間後となる8月18日を予定しています。「私はこうしたい」から始まり、政権を獲ってからは「私はこうする」「私はこうした」というお話も増えてきた撫子ですが、次回はいよいよ、「幸村政権に変わってから、各種指標は実際にこう改善した」という類の、「中間報告」っぽいのを中心に描きたいかなと思っています。今回の表題は「党首討論」ではなく、前半の内容を反映させた「レント・シーキング」や「レント・シーカー」でも良かったかもしれません。それではまた、次回のあとがきでお会いしましょう。